エルニーニョ(その他表記)El Niño

翻訳|El Niño

デジタル大辞泉 「エルニーニョ」の意味・読み・例文・類語

エル‐ニーニョ(〈スペイン〉El Niño)

《幼子キリストの意》南米ペルー沖の近海で、ほぼ毎年12月ごろに水温が高くなる現象貿易風が弱まることで付近暖流が移動して発生する。
エルニーニョ現象」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「エルニーニョ」の意味・読み・例文・類語

エル‐ニーニョ

  1. 〘 名詞 〙 ( [スペイン語] El Niño 「幼子キリスト」の意 ) 五~八年に一度、クリスマスのころペルー沖の暖流が南下し、海面水温が一~五度高くなる現象。世界各地に異常気象をもたらす。もともとは、南米太平洋岸のグアヤキル湾に流れこんだ暖流のため暖流系の魚がとれ、これをクリスマスプレゼントと考え、ペルーでエル‐ニーニョとよんだもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「エルニーニョ」の意味・わかりやすい解説

エルニーニョ
El Niño

南アメリカ大陸の西岸ペルー沖の海域には,ふだんは湧昇流が生じている。つまり海の表層は,通常深層から昇ってくる栄養分に富む冷たい海水によって満たされている。ところが数年に1度赤道方面から暖かい水が流れ込み海況が一変することがある。この現象がエルニーニョと呼ばれるもので,いったんエルニーニョが起こると数ヵ月も続くので,沿岸の気候に影響することはもとより,海中プランクトンを死なせてしまうために,世界最大の漁場である同海域の漁獲量が激減するなどその影響はきわめて大きい。

 エルニーニョの原因は解明されていないが,太平洋全体の風系,特に貿易風が例年より弱まったときとの相関関係が大きいとの指摘がなされている。また全地球的な異常気象とも関連があるといわれる。近年では1972年,76年,82-83年,86-87年,91-92年に起こった。

 エルニーニョはもともとスペイン語で幼児(キリスト)を意味し,この現象がクリスマス後に始まることが多いことに由来している。
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知恵蔵 「エルニーニョ」の解説

エルニーニョ

南米のペルー沿岸沖で毎年クリスマスの頃に海面水温が一時的に高くなる現象を、地元ではスペイン語でエルニーニョ(「神の子」の意)と呼ぶ。ところが数年に一度、沿岸沖から日付変更線にかけての広い太平洋東部海域で、海面水温が平年に比べ高い現象が半年以上も続くことがある。これがエルニーニョ現象。北東貿易風が何らかの原因で弱まると、太平洋西部の暖水が東部に移動する。すると、暖かい赤道海域で上昇気流が活発となり、次いで北太平洋高気圧を強めるなどして地球上の大規模な空気の流れを変え、世界的に異常気象をもたらす。日本では、梅雨明けが遅く、豪雨が降りやすく、冷夏暖冬になりやすい。1997〜98年の20世紀最大のエルニーニョ現象の時は、インドネシアやオーストラリアで少雨・高温、北米などで大雨が降った。エルニーニョ現象の時は、南東太平洋のタヒチとオーストラリアのダーウィンとの気圧差は負となる。この気圧差の変動を南方振動(southern oscillation)といい、数年のリズムで変化しエルニーニョ現象と相関がよい。海洋のエルニーニョと大気の南方振動を合わせてエンソ(ENSO)と呼ぶ。インド洋でも東風が強まると暖水がアフリカ東岸に吹き寄せられ、インド洋西部が暖かく、インドネシア西側の海面が冷たくなる。海面水温、雲量分布などが二極化することから、ダイポール(dipole=双極)モード現象という。日本への影響は今後の研究課題。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルニーニョ」の意味・わかりやすい解説

エルニーニョ
El Niño

赤道付近の東太平洋(ペルーやエクアドルの沖合い)で,クリスマスの頃,赤道に向かって流れるフンボルト海流(ペルー海流)が弱まり,海面温度が上昇する現象のこと。数年に一度,東太平洋の広い範囲で海面温度が上がる現象が 6ヵ月から 1年くらい続くことがあり,これをエルニーニョ現象という。エルニーニョ現象が起こると世界各地で気温や降水量の変化が顕著に現れやすくなり,日本では冷夏,暖冬,梅雨明けの遅れ,日本付近では台風の発生数が減少する傾向がある。気象庁は 1992年から,エルニーニョ現象などの見通しを予測モデルを用いて 6ヵ月先まで予測し,その結果をもとにエルニーニョ監視速報として毎月発表している。(→ラニーニャ

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百科事典マイペディア 「エルニーニョ」の意味・わかりやすい解説

エルニーニョ

ペルー沖の海域は,ふだんは湧昇流によって冷たい栄養分に富む海水で満たされているが,数年に1度の割合で赤道方面から暖かい海水が流れ込むことがある。これをエルニーニョ現象という。エルニーニョは漁民の言葉で,クリスマスの頃に発生することが多いので,〈神の男の子〉すなわち幼児キリストを意味する。その原因は十分解明されていない。数ヵ月も続き,海中のプランクトンを死滅させ,世界有数の漁場である同海域の漁獲量を激減させる。さらに日本を含め,世界の気候に影響を与えるので,気象庁では監視と予報を行っている。
→関連項目ラニーニャ

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