海洋基本法(読み)カイヨウキホンホウ

デジタル大辞泉 「海洋基本法」の意味・読み・例文・類語

かいよう‐きほんほう〔カイヤウキホンハフ〕【海洋基本法】

海洋開発利用等に関する基本的な理念施策等を定めた法律政府海洋基本計画策定を義務付けるなど、国・国民事業者などが果たすべき責務についても規定する。平成19年(2007)施行

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海洋基本法」の意味・わかりやすい解説

海洋基本法
かいようきほんほう

海洋政策を一元的・総合的に実施し、日本の沿岸200海里(約370キロメートル)までの排他的経済水域での海洋権益を守ることを目的として、2007年(平成19)4月に成立した法律(平成19年法律第33号)、同年7月に施行。

田中 謙 2024年8月16日]

背景

国連海洋法条約が発効した1994年以降、海に面した国には排他的経済水域が認められた。同条約を受けて、中国や韓国などは海洋政策を強化し、基本法や基本戦略を進めてきたが、日本は海洋政策を所管する省庁が6省庁にまたがっていたこともあり、総合的な海洋政策がなされず、漁業問題をめぐる韓国、中国、台湾ロシアに対する対応も十分とはいえなかった。その後、東シナ海でのガス田開発をめぐる中国との対立などを契機として、海洋政策の新たな制度的枠組み構築が必要とされ、2007年に超党派議員立法で制定されたものが本法である。また、食料、資源・エネルギーの確保や物資の輸送、地球環境の維持等、海が果たす役割が増大していることに加えて、海洋環境の汚染、水産資源の減少、海岸侵食の進行、重大海難事故の発生、海賊事件の頻発等、さまざまな海の問題が顕在化したという背景もある。

[田中 謙 2024年8月16日]

内容

本法は、海洋に関し、海洋の開発および利用と海洋環境の保全との調和、海洋の安全の確保といった「基本理念」を定め、国、地方公共団体、事業者および国民の責務を明らかにしているほか、海洋に関する基本的な計画(海洋基本計画)の策定、その他海洋に関する施策の基本となる事項について定めている。

 本法は、政府に対して、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、海洋基本計画を定めることを義務づけている。同計画では、「海洋に関する施策についての基本的な方針」「海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」「海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項」について定めるものとしている。同計画は、おおむね5年ごとに見直しを行い、必要な変更を加えることとされており、これまで、2008年に第1期海洋基本計画、2013年に第2期海洋基本計画、2018年に第3期海洋基本計画、2023年(令和5)には第4期海洋基本計画が閣議決定された。第4期海洋基本計画では、海洋に関する施策についての基本的な方針として、(1)「総合的な海洋の安全保障」の基本的な方針、(2)「持続可能な海洋の構築」の基本的な方針、(3)着実に推進すべき主要施策の基本的な方針(海洋の産業利用の促進、科学的知見の充実、海洋におけるDX〈情報インフラ等のデジタルトランスフォーメーション〉の推進、北極政策の推進、国際連携・国際協力、海洋人材の育成・確保と国民の理解の増進、新型コロナウイルス等の感染症対策)が定められている。

 本法に基づいて、海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するため、内閣総理大臣を本部長とする「総合海洋政策本部」が内閣に設置された。

 また、本法の制定と同時に成立した海洋構築物安全水域設定法により、排他的経済水域内の掘削施設や人工島の周囲500メートル以内に安全水域を定め、水域内への立ち入りを制限できるようになった。

[田中 謙 2024年8月16日]

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知恵蔵 「海洋基本法」の解説

海洋基本法

海洋政策を一元的・総合的に実施し、日本の排他的経済水域(EEZ)での権益を守ることを目的に、2007年4月20日に成立し、同年7月20日に施行された法律。日本が主張するEEZの面積は国土の12倍に当たる約447万平方キロメートルで、世界第6位の広さである。しかし、所管官庁が8省庁にまたがっていることもあり、総合的な海洋政策が打ち出せず、東シナ海ガス田開発問題(対中国)や漁業問題(対韓国、中国、台湾、ロシア)への対応も十分とはいえないものであった。基本法では、海洋政策を一元的に推進するために、内閣官房に首相を本部長とする「総合海洋政策本部」を設け、「海洋政策担当大臣」を新設する。また、国が行う基本的施策として、(1)海洋資源開発、(2)EEZ開発推進、(3)海洋の安全確保、(4)海洋調査の推進、(5)離島の保全など12項目を挙げている。政府は今後、総合海洋政策本部で海洋基本計画を策定し、EEZ内の海洋権益を守る上で必要な諸施策を打ち出す方針である。

(榎彰徳 近畿大学農学部准教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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