日本大百科全書(ニッポニカ) 「消化不良症」の意味・わかりやすい解説
消化不良症
しょうかふりょうしょう
食物の消化が順調に行われないために下痢や嘔吐(おうと)をおこす場合をいう。おもに生後から2年間ぐらいの乳児や幼児にみられ、入院治療の必要なこともある。成人では軽症で簡単に治癒することが多い。栄養摂取は、食事栄養素の摂取、消化吸収、体内に入ってからの中間代謝の3段階に大別されるが、乳児期には消化吸収機能に余裕がなく、反面、成長発育に伴う体内の代謝は旺盛(おうせい)であるので、ちょっとした食事摂取の過誤や消化吸収の障害から代謝障害を引き起こしやすく、下痢や嘔吐などの消化器症状ばかりでなく、代謝性アシドーシス、二次的他臓器感染、腎(じん)障害、循環障害などの全身障害をおこし、意識障害、けいれんなどの中毒症状を現してくる。このような重症の消化不良症を消化不良性中毒症という。
[細田四郎]
原因
消化不良の原因は、(1)食事の過誤として過量の食事(ミルク)を与えたとき、濃厚な調乳、質的に偏りのある食事、不消化な食物、離乳期の不適切な食事などがあげられる。(2)腸感染症としては、細菌(サルモネラ菌、赤痢菌、病原大腸菌、ブドウ球菌、緑膿(りょくのう)菌)やウイルスなどによるものがある。(3)腸管外感染症としては、感冒、咽頭(いんとう)炎、気管支炎、中耳炎、腎盂(じんう)炎などのあるときにみられる。(4)高温・高湿によるうつ熱は食欲減退、消化機能の低下を招く。(5)体質異常、すなわち滲出(しんしゅつ)性体質、アレルギー性体質、神経症体質などが背景にあるときにおこりやすい。
[細田四郎]
症状
おもな症状は下痢で、排便回数も多い。下痢便は水様から泥状で、つぶつぶやねばねばの粘液が混じることが多く、色調は黄褐色、緑色、白色などいろいろで、不快な腐敗臭が強いこともある。一般症状としては食欲不振、不機嫌、軽度発熱、体重は増加停止ないし減少する。腸管外感染症を合併するときは高熱となる。下痢による脱水のため、皮膚は乾燥して弾力性を失い、腹部は鼓腸により膨隆する。脱水と腎障害によって尿量が減少し、重症では意識障害、けいれん、循環障害などの中毒症状もおこる。
[細田四郎]
治療
軽症では吐き気がなければ母乳はそのまま与えるが、湯冷ましや番茶を与えて水分を補給する。人工栄養のときはミルクを約2分の1に希釈する。離乳食の場合はこれを一時中止し、母乳やミルクだけにする。嘔吐のある場合には入院して輸液を必要とするので、小児科医の診察を受けてその指示に従う。中毒症状のあるときは一刻も早く入院して治療を受ける必要がある。
[細田四郎]