消泡剤(読み)しょうほうざい(その他表記)antifoaming agent

改訂新版 世界大百科事典 「消泡剤」の意味・わかりやすい解説

消泡剤 (しょうほうざい)
antifoaming agent

発泡を抑制する抑泡作用,または生じた泡を破壊する破泡作用をもつ薬剤界面活性剤一群。発泡は,食品発酵工業製紙繊維工業塗料・高分子工業などの合成や製品処理の過程で操作上のトラブルとなることが多く,また最近は都市廃水処理等でも問題となっている。このように発泡は多様な分野で起こり,その形態も異なるため,消泡の操作もそれぞれの場合に適した処理がなされる。発泡の原理は,まず液体中に気泡が生じたときその気液界面で起泡液の単分子膜ができ,それが液表面に押し出された際に,液面に配向する表面配向分子膜と合わせて二分子配向膜を形成し,これが泡を安定化する。それゆえ消泡には液中に安定な気泡を生じさせないよう,溶解度を高め,液粘度を下げるとか,配向膜に他の物質を混在させて,安定な力学的平衡を乱すなどの手段がとられる。消泡剤としては,長鎖アルコール炭化水素,動植物油,アルキルポリオキシシロキサンなどが従来使用されているが,最近では界面活性剤で一般にHLBの小さい,親油性の大きいもの,ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体(ブロック体),ソルビタン脂肪酸エステル,多価アルコール脂肪酸部分エステルなどが用いられている。また一連のシリコーン系界面活性剤も利用される。なお破泡にはアルコールのほか,粉体のような異物をかけたり,泡表面を加熱するような手段もとられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「消泡剤」の意味・わかりやすい解説

消泡剤
しょうほうざい
antifoaming agent

製紙、繊維、染色、金属、塗料、発酵その他諸工業で問題となる発泡を防止する効果をもつ薬剤で、効果が一時的な破泡剤と、持続性の抑泡剤に分けられる。炭素数の少ない低級アルコール類は破泡効果はよいが、液中に溶解後は作用しない。抑泡剤としては液に溶解しない揮発性の大きい油状物が望ましく、2-エチルヘキサノール、ジイソオクチルエーテルのような有機極性化合物、ソルビタンエステル類(Span20, 85など)、プルロニックL-61のような低親水性界面活性剤、脂肪酸金属塩を添加した鉱物油シリコーン油などが用いられている。とくにシリコーン系消泡剤は微量の添加で優れた破泡性、抑泡性を示す。

[岡原光男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「消泡剤」の解説

消泡剤

 食品の製造過程などで,泡が生じ作業に支障をきたす場合があるが,そのときに泡を消す目的で加える物質.アルコール,油,シリコン樹脂など.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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