液体クロマトグラフィー(読み)えきたいくろまとぐらふぃー(英語表記)liquid chromatography

日本大百科全書(ニッポニカ) 「液体クロマトグラフィー」の意味・わかりやすい解説

液体クロマトグラフィー
えきたいくろまとぐらふぃー
liquid chromatography

クロマトグラフィー一種で、移動相(展開剤)が液体のものをいう。固定相(吸着剤)と移動相の種類により分離機構が異なる。

 固定相が固体の場合には、物質の分離現象がおもに吸着力の差によっておこるので吸着クロマトグラフィーとよび、シリカゲルアルミナ活性炭などを吸着剤に用いる。固定相にイオン交換樹脂を用いる場合には、とくにイオン交換クロマトグラフィーとよぶ。また、固定相に多孔性充填(じゅうてん)剤を用い、充填剤の孔(あな)の中への溶質成分の浸透性の難易によって分子サイズで分離する方法を分子ふるいクロマトグラフィーとよぶ。担体(固定相となる液体を保持するのに用いる固体。化学的に不活性で、各種ガスに対し吸着能をもたず、表面積が大きいものが用いられる)に保持された液体を固定相に用いる場合は、固定相と移動相への物質の分配力の差によって分離がおこるので、これを分配クロマトグラフィーとよぶ。

 これらは、分子ふるいクロマトグラフィーを除くと原理的には同じで、固定相と移動相への溶質の溶解性、吸着性、イオン交換性などの諸性質の差を利用して混合成分の分離を行う。その他の作用機構によるものとして、塩析現象を利用した塩析クロマトグラフィー、電気泳動現象を利用した電気クロマトグラフィー、生体分子の分子間の特異な相互作用を利用するアフィニティクロマトグラフィーなどがある。従来の液体クロマトグラフィーは、カラム(管柱)に比較的直径の大きなものを用い、重力または低圧ポンプにより小さな流速で行われていたので、分離時間で難点があった。その後、ガスクロマトグラフィーなどから発展したクロマトグラフの理論や良好な充填剤などの開発により、分離と定量が高速で行われるようになった。この液体クロマトグラフィーを高速液体クロマトグラフィーHPLC)という。

[高田健夫]

『宮崎元一編、今泉範子他著『廣川化学シリーズ53 わかりやすい高速液体クロマトグラフィー』(1991・廣川書店)』『松下至著『液体クロマトグラフィー100のテクニック――これだけ知れば使いこなせる』(1997・技報堂出版)』『松下至著『液体クロマトグラフィーQ&A100――例題で学ぶ基礎理論と技術』(2000・技報堂出版)』『日本分析化学会編『高速液体クロマトグラフィーハンドブック』改訂2版(2000・丸善)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「液体クロマトグラフィー」の意味・わかりやすい解説

液体クロマトグラフィー
えきたいクロマトグラフィー
liquid chromatography

広義には移動相が液体であるクロマトグラフィーをいい,移動相が気体ガスクロマトグラフィーに対応する。狭義には,カラムクロマトグラフィーの1種で,カラム内で分離後も展開溶媒を流し続け,各成分を順次流出させて連続定量あるいは分取する方法をいう。微量法,高速法も考案され,広範囲に応用されている。

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