淋菌性腟炎(読み)りんきんせいちつえん(英語表記)Gonococcal vaginitis

六訂版 家庭医学大全科 「淋菌性腟炎」の解説

淋菌性腟炎
りんきんせいちつえん
Gonococcal vaginitis
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 淋病(りんびょう)梅毒(ばいどく)と並んで、古くからよく知られた性感染症のひとつで、本症は淋菌の感染によって起こる腟炎です。抗生剤の使用により減少の一途をたどっていましたが、近年は性行為の多様化や、薬剤耐性菌(たいせいきん)の増加によって著しい増加傾向にあり、クラミジアに次いで多い性感染症になっています。

 性交により感染しますが、幼児や小児の場合は下着や手指からの感染もあります。まず子宮頸管(けいかん)、尿道、バルトリン腺直腸に感染します。さらに上行感染によって、子宮内膜炎(しきゅうないまくえん)卵管炎(らんかんえん)骨盤腹膜炎(こつばんふくまくえん)肝周囲炎(かんしゅういえん)などに進展することもあります。

 また最近は、性行為の多様化により、口を使ったオーラルセックスによる淋菌性咽頭炎(りんきんせいいんとうえん)が増加しています。咽頭の淋菌は、性器の淋菌よりも治療の効果が出にくく、消失しにくいともいわれています。

症状の現れ方

 女性の場合、35~50%が無症状です。症状は、黄色で膿性の帯下(たいげ)おりもの)の増加、外陰部の瘙痒感(そうようかん)(かゆみ)や灼熱感(しゃくねつかん)排尿痛などです。子宮内膜炎卵管炎骨盤腹膜炎を発症すると下腹部痛や発熱を生じます。

 骨盤内の炎症は卵管周囲の癒着を生じ、不妊の原因となることもあります。産道感染により、新生児結膜炎(けつまくえん)を発症することもあります。

検査と診断

 子宮頸部、尿道からの分泌物の観察が重要です。分泌物の顕微鏡による観察と培養を行い、淋菌の証明をします。最近では、酵素免疫法、DNAプローブ法などが普及しつつあります。

治療の方法

 第一選択は、ペニシリン系抗生剤の使用です。セフェム系抗生剤も有効です。感受性があれば、ニューキノロン系も使用します。近年は抗生剤に耐性のある菌が出現しており、治療を困難にしています。

病気に気づいたらどうする

 ほかの性感染症との合併もまれではないので、症状が現れたら産婦人科を受診してください。

藤原 敏博

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報