骨盤腹膜炎(読み)こつばんふくまくえん(英語表記)pelvic peritonitis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

骨盤腹膜炎
こつばんふくまくえん
pelvic peritonitis

骨盤腔に限局する急性化膿性腹膜炎のうち,女性器に由来するものをいう。卵管の先端は腹腔に開いているために,細菌が卵管を経由して腹腔に入ったり,卵管炎,卵巣膿瘍などからも起る。淋菌によることが最も多いが,ブドウ球菌大腸菌混合感染もまれではない。虫垂炎から波及することもある。帯下や腰痛に続いて嘔吐や下腹部痛が起るのに,体温や脈拍,白血球数などの変化が比較的軽微なのが特色である。治療は安静,強力な化学療法が原則で,予後は一般に良好である。

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家庭医学館の解説

こつばんふくまくえん【骨盤腹膜炎 Pelvic Peritonitis】

[どんな病気か]
 子宮付属器炎(しきゅうふぞくきえん)(「子宮付属器炎(卵管炎/卵巣炎)」)が悪化して、炎症が骨盤腹膜(骨盤内腔(ないくう)をおおう腹膜)に波及したものをいいます。
 虫垂炎(ちゅうすいえん)(「虫垂炎(虫垂突起炎)/盲腸炎」)など、腸管(ちょうかん)の炎症性の病気から骨盤腹膜炎をおこすこともありますが、比較的少ないようです。
 ひどくなると、卵管(らんかん)、卵巣(らんそう)、子宮と腸管、大網(たいもう)、腹膜などが癒着(ゆちゃく)して、ひとかたまりとなり、その間に膿瘍(のうよう)ができます。
[症状]
 発熱、下腹部痛、悪心(おしん)(吐(は)き気(け))・嘔吐(おうと)(腹膜刺激症状)などの症状を示します。
[検査と診断]
 触診(しょくしん)によって、下腹部に強度の圧痛(押すと痛みがある)、筋性防御(一定の部分の筋肉が緊張する)、ブルンベルグ徴候(指で圧迫した後、急に指を離すと痛みを感じる)を示します。
 婦人科の内診で、内性器(子宮、卵巣、卵管)に圧痛を認め、子宮の周囲に腫瘤(しゅりゅう)、硬結(こうけつ)(しこり)、波動(炎症にともなう浸出液(しんしゅつえき)や膿(うみ)などがたまっている状態)を触れることがあります。
 検査については、「子宮付属器炎(卵管炎/卵巣炎)」を参照してください。
[治療]
 入院して、抗生物質による化学療法を強力に行ないます。化学療法を行なっても膿瘍が残っている場合には、手術療法を行ないます。
 手術療法については、「子宮付属器炎(卵管炎/卵巣炎)」を参照してください。

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世界大百科事典 第2版の解説

こつばんふくまくえん【骨盤腹膜炎 pelveoperitonitis】

婦人に特有な限局性腹膜炎で,子宮外膜炎,卵管内膜炎,卵巣周囲炎,S状結腸周囲炎を含んだ骨盤腹膜の炎症を総称する。病原菌には大腸菌,ブドウ球菌,連鎖球菌結核菌,淋菌などがあり,分娩,流早産,ことに人工妊娠中絶堕胎,その他不潔な子宮内操作などによる子宮内膜炎や付属器炎に続いて発症することが多い。骨盤腹膜炎の多くは癒着により炎症が骨盤内に限局する傾向が強い反面,周囲臓器との繊維性の癒着を生じやすく,不妊の原因ともなりやすい。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

骨盤腹膜炎
こつばんふくまくえん
Pelvic peritonitis
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 骨盤内には前に膀胱、後ろに直腸、その間に子宮・卵管があり、それらの表面は腹膜でおおわれています。この骨盤腹膜に起こった炎症が、骨盤腹膜炎です。

原因は何か

 骨盤腹膜炎の多くは、前述の子宮頸管炎(けいかんえん)から子宮内膜炎(ないまくえん)子宮付属器炎、そして骨盤腹膜炎へと感染が上行性に進むことにより発症します。したがって、これら子宮頸管炎子宮内膜炎および子宮付属器炎の原因が、骨盤腹膜炎の原因になりえます。

 最近では、性行為感染症であるクラミジアと淋菌感染によるものが増えています。また、子宮内避妊器具(IUD)を交換せずに長期間装着していると、発症することがあります。そのほか、開腹手術後の感染から起こることもあります。

症状の現れ方

 急性期には、下腹部全体に及ぶ持続性の痛みや膿性帯下、悪寒(おかん)・震えを伴う発熱などが認められます。腹膜刺激による悪心(おしん)・嘔吐も認められます。

 慢性期に移行すると、骨盤内の臓器が癒着(ゆちゃく)を起こし、下腹部痛、腹部膨満感、下痢、便秘などがみられます。

検査と診断

 急性期には下腹部の圧痛が認められ、腹壁の筋肉が緊張し硬く触れます(筋性防御(きんせいぼうぎょ))。内診では子宮や付属器に圧痛が認められます。血液検査では、白血球増多、CRP陽性などの急性炎症所見が認められます。

 腹膜炎による滲出液(しんしゅつえき)や膿汁がダグラス窩(子宮と直腸の間の腹膜腔)にたまり、膿瘍(のうよう)を形成することがあります。膿瘍の診断は、経腟(けいちつ)超音波断層法、CT、MRIなどの画像検査により行います。既往歴、症状および診察・検査所見から、診断を行います。

治療の方法

 急性期には原因菌に合った抗生剤療法を行います。

 膿瘍や卵管留膿腫(らんかんりゅうのうしゅ)を合併していて、これらが抗生剤療法で効果がない場合、外科的処置が必要になります。

 慢性期には、疼痛、排便などの症状に対症療法が行われます。

病気に気づいたらどうする

 適切な抗生剤療法が必要なので、早急に受診する必要があります。

水口 剛雄

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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