日本大百科全書(ニッポニカ) 「清水哲男」の意味・わかりやすい解説
清水哲男
しみずてつお
(1938―2022)
詩人。東京生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。在学中に大野新(しん)(1928―2010)や有馬敲(ありまたかし)(1931―2022)らと詩誌『ノッポとチビ』を創刊。以降、旺盛(おうせい)に詩作に励む。卒業後は文芸誌の編集者を経て、文筆業に専念する。美術・映画・スポーツ・芸能と幅広い分野で著述活動を行う。また、ラジオ番組のパーソナリティーとしても活躍。京都大学在学中に、第一詩集『喝采(かっさい)』(1963)を刊行し、新しい抒情(じょじょう)詩人の誕生と絶賛される。その後、清水が「水の詩人」と称されるきっかけとなった詩集『水の上衣』(1970)を発表する。1974年(昭和49)に『水甕座(みずがめざ)の水』でH氏賞を受賞し、「清水哲男ほど現代の情を繊細華麗に抒(の)べる詩人はいない」(大野新)と評価されることとなる。
その後も、アニメのキャラクターを作品の主人公として登場させ、斬新なパロディー手法でその一つ一つを詩にまとめあげた『スピーチバルーン』(1975)や、『野に、球』(1977)、『雨の日の鳥』(1978)、『東京』(1985。詩歌文学館賞)、『緑の小函(こばこ)』(1997)などの詩集を刊行し、辻征夫(ゆきお)(1939―2000)と並んで抒情詩の旗手として活躍した。詩集『夕陽に赤い帆』(1994)では、透徹した哲学的な視線で日常やこれまでの半生、老いの心境などを見据えながらも、清水ならではの軽妙で現代的な文体がすばらしい達成をみせ、萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)賞と土井晩翠(どいばんすい)賞とを同時に受賞することとなり、話題をさらった。
探求的であるがどこか軽快な詩精神は、文章にも独特の明るさとリズムとを生み、『今朝の一句』(1989)、『現代詩つれづれ草』(1993)、『詩に踏まれた猫』(1998)、『さらば、東京巨人軍。』(2001)などのエッセイや評論集など多数の著作を刊行した。
1990年代後半からインターネットに詩人としていち早く取り組み、詩作のかたわら続けてきた句作を『匙(さじ)洗う人』(1991)という句集にまとめて話題を集めたこともある。清水の、その俳句への情熱を語りながら、一日一句を紹介するサイト「増殖する俳句歳時記」で数多くのファンを獲得した。
[和合亮一]
『『喝采』(1963・文童社)』▽『『水の上衣』(1970・赤ポスト)』▽『『水甕座の水』(1974・紫陽社)』▽『『スピーチバルーン』(1975・思潮社)』▽『『野に、球』(1977・紫陽社)』▽『『雨の日の鳥』(1978・アディン書房)』▽『『東京』(1985・書肆山田)』▽『『匙洗う人』(1991・思潮社)』▽『『現代詩つれづれ草』(1993・新潮社)』▽『『夕陽に赤い帆』(1994・思潮社)』▽『『緑の小函』(1997・書肆山田)』▽『『詩に踏まれた猫』(1998・出窓社)』▽『『さらば、東京巨人軍。』(2001・新潮社)』▽『『清水哲男詩集』『続・清水哲男詩集』(現代詩文庫)』▽『清水哲男選『今朝の一句』(1989・河出書房新社)』