湯巻(読み)ゆまき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

湯巻
ゆまき

平安時代に宮中に仕えていた女房たちが湯殿奉仕の際に,装束のよごれを防ぐために用いた前垂れのような形態の服飾品。のち湯殿奉仕ばかりでなく一般の仕事の際にも用いられ,また鎌倉時代には女性の着脱の不便さから的な袴が用いられることとなり,これが湯巻と呼ばれて下級女官の日常着となった。さらに室町時代になるとこれが礼装視されるようになり,地質絹織物や綾が用いられるようになった。

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デジタル大辞泉の解説

ゆ‐まき【湯巻(き)】

古代・中世、貴人の入浴に奉仕する女官が、湯にぬれるのを防ぐために衣服の上から腰に巻いた裳(も)の一種。多くは白い生絹(すずし)を用い、のちには模様のあるものも用いた。いまき。
入浴の際に腰に巻いた布。江戸時代、宝永(1704~1711)ころまでは男女とも裸で入浴することはなく、布を腰に巻いて入った。湯文字(ゆもじ)。
女性の腰巻き。蹴出(けだ)し。二幅(ふたの)。いまき。

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大辞林 第三版の解説

ゆまき【湯巻】

入浴するときに腰に巻いた布。江戸時代中頃まで男女とも裸で入浴することはなかった。湯文字。
中古、貴人の入浴に奉仕する人がぬれないように衣服の上から腰にまとったもの。多くは白い生絹すずしを用いた。のちには身分の高くない女性が袿うちき代わりに用いた。
女性の腰巻。蹴出けだし。ふたの。

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精選版 日本国語大辞典の解説

い‐まき【湯巻】

〘名〙
① (「ゆまき」の変化した語) 御湯殿に奉仕した女官が、衣装の上から腰にまとった。白い生絹(すずし)を用いた。
※侍中群要(1071か)五「定詞〈略〉今支 奉仕御湯殿之人所着衣也生白絹也」
② (転じて) 和服の女性が腰に巻く布。腰巻。

ゆ‐まき【湯巻】

〘名〙
① 中古、貴人の入浴に奉仕する女官が、湯にぬれるのを防ぐため、衣服の上から腰に巻いた裳の一種。多くは白い生絹(すずし)を用い、後には模様のあるものも用いた。また、これを湯槽(ゆぶね)にも敷いた。転じて、女房の略装をもいう。いまき。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「御湯殿、春宮の若宮の御迎湯に参り給し内侍のすけ、白き綾の生絹に単襲の袿上に着て、綾のゆまき、御ふねの底にも敷き」
② 一般に、入浴に際して腰に巻いた布。江戸時代、宝永年間(一七〇四‐一一)頃までは男女とも裸で入浴することはなく、布を腰に巻いてはいるのが習わしであった。二幅の布を合わせて作り、色は緋・白・浅黄などが用いられたが、女はその裾が開かないように端に四か所鎮(しず)を入れたりしたという。湯文字(ゆもじ)
※歌舞伎・御国入曾我中村(1825)三立「丸裸になり、白の湯巻(ユマ)きばかりにて、出羽吉風呂へ入る」
③ 転じて、女の腰巻。蹴出し裾除け。いまき。ふたの。

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世界大百科事典内の湯巻の言及

【腰巻】より

…初めは武家社会の婦人の礼装として用いられた表着(うわぎ)を指したが,江戸時代後期以降主として庶民社会の女性に用いられた湯巻や蹴出(けだし)のことを腰巻というようになった。さらに現代では腰から脚部にかけてまとう布を,腰巻と総称するようになった。…

【服装】より

…素襖も直垂から変化したもので,ただ袖に露のないこと,胸紐と菊綴(きくとじ)が革(かわ)であること,袴の腰が共裂(ともぎれ)であることを特色とした。 女子の礼装は平安末期から漸次簡略化されて,衣袴,小袖袴などの服装が行われたが,室町時代に入ると,ようやく袴を着用しない湯巻姿,腰巻姿が女子の礼装として認められた。湯巻は御湯殿奉仕の女官の着用したもので,裳のように下体に巻くものであったが,袴より身軽なところから,この時代に一般女官の服装として用いられ,文様,色目,地質など華美なものとなった。…

【風呂】より

…【玉井 哲雄】
[入浴の習俗]
 江戸前期までは,銭湯などで入浴の際には下帯,腰巻をするのが習慣で,別に持参した下帯,腰巻とつけ替えて入浴し,下盥(しもだらい)で洗って持ち帰った。この下帯を〈ふろふんどし〉,腰巻あるいは身に巻きつける布を〈湯文字(ゆもじ)〉〈湯巻〉といった。また,ぬれたものを包むため,あるいは風呂で敷いて身じまいをするための布を風呂敷といい,その名称は今日も残っている。…

※「湯巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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