日本大百科全書(ニッポニカ) 「漁業管理」の意味・わかりやすい解説
漁業管理
ぎょぎょうかんり
fishery management
水産資源利用などのために行われる種々の規制(制限)のこと。漁業規制と同義語に用いられることも多いが、漁業規制は水産資源保護のために行われる規制であり生物学的に資源の有効利用を問題とするのに対し、漁業管理は経済的達成度を高めることを目的に資源を有効利用しようとするものである。
この意味での漁業管理の必要性を初めて論じたのは、カナダの経済学者ゴードンH. S. Gordon(1924―2019)である。彼の理論の背景には、世界でもっとも成功したとされる太平洋オヒョウ(大鮃)の資源管理(漁業規制)、およびそれとは対照的な漁業者所得の貧困の問題があった。多年にわたる漁獲量制限によりオヒョウ資源は最大持続生産量(MSY:maximum sustainable yield)に近い水準まで回復したが、その制限量までの漁獲は自由に競争できたので、漁船の増加と漁獲能率の向上によって操業日数が極端に短くなるなどの不経済を生み、総漁獲量の増加分をすべて漁業費用の増加で食いつぶすという状況に陥ったのである。漁業者のために管理するというのであれば、漁獲量ないし漁獲金額の最大化(すなわちMSY)ではなくて、漁獲金額から費用を差し引いた利益部分の最大化を実現する努力投入を考えるべきだ、というのがゴードンの主張で、これは最大経済生産量(MEY:maximum economic yield)の理論といわれる。その後魚価変動の因子が導入されたり、静態論から動態論への理論の発展がなされる一方、管理方法についてもいろいろな提案が行われている。現在の漁業管理の詳細については、項目「水産資源管理」を参照。
[編集部]