日本大百科全書(ニッポニカ) 「灰水鉛石」の意味・わかりやすい解説
灰水鉛石
かいすいえんせき
powellite
カルシウムの正モリブデン酸塩鉱物。パウエル石ともいうが、1968年パーウェル石parwellite(化学式(Mn2+,Mg)5 As5+Sb5+SiO12)が発見されたので、これとの混乱を防ぐため、現在は灰水鉛石に統一される傾向にある。灰重石(かいじゅうせき)のモリブデン置換体。灰水鉛石と灰重石は化学組成上連続する。灰重石系の一員。自形は正方両錐(すい)。ときに正方板状。皮膜状、粉末状、塊状のものもある。高温熱水~気成鉱脈鉱床、接触交代鉱床中に初生鉱物あるいは二次鉱物として産する。まれに玄武岩の空隙(くうげき)中に産する。輝水鉛鉱を多産する斑岩(はんがん)銅鉱鉱床からの報告もある。日本では岡山県御津(みつ)郡加茂川(かもがわ)町(現、加賀郡吉備(きび)中央町)加茂鉱山(閉山)、富山県黒部(くろべ)市小黒部(こくろべ)鉱山(閉山)などから産することが知られている。
共存鉱物は輝水鉛鉱、鉄水鉛華、石英、白雲母(うんも)、フッ素魚眼石fluorapophyllite(KCa4[(F,OH)|(Si4O10)2]・8H2O)、灰束沸石(かいたばふっせき)stilbite-Ca((Ca,Na2)[Al2Si7O18]・7H2O)、濁沸石(だくふっせき)など。同定は紫外線による発光があること、灰重石より黄色味が強く、比重がずっと小さいこと、輝水鉛鉱との密接共存などによる。英名はアメリカの地質学者ジョン・ウェスレー・パウエルJohn Wesley Powell(1834―1902)にちなむ。
[加藤 昭 2016年2月17日]