日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄水鉛華」の意味・わかりやすい解説
鉄水鉛華
てつすいえんか
ferrimolybdite
三価の鉄の含水モリブデン酸塩鉱物。モリブデン酸塩鉱物やタングステン酸鉱物は周期律表で同じ列に属する硫黄とともに[XO4]2-型の基本基をもち、原子価も+6と等しいので、系統分類上同じ類に入れられる。自形は報告されていないが、針状でa軸方向に伸びたものが放射状集合をなす例が知られている。輝水鉛鉱を含む各種熱水鉱床あるいは気成鉱床、接触交代鉱床の酸化帯に産するほか、いわゆる斑岩銅(はんがんどう)鉱鉱床で輝水鉛鉱を伴うものからも報告されている。日本では、岩手県久慈(くじ)市大川目(おおかわめ)鉱山(閉山)、島根県大東(だいとう)町(現、雲南(うんなん)市)東山鉱山(閉山)などから知られている。
共存鉱物は輝水鉛鉱のほか、黄鉄鉱、黄銅鉱、石英など。同定はいわゆるカナリア黄の色調、皮膜状の集合状態。輝水鉛鉱と共存していればまず間違いはない。泡蒼鉛(あわそうえん)bismutite(Bi2[O2|CO3])はレモン黄という感じが強く、鉄水鉛華のような橙(だいだい)色を帯びることは少ない。海外で報告されているような緑色を帯びたものは日本ではないようである。命名はその化学成分による。
[加藤 昭]