無主物先占(読み)ムシュブツセンセン(その他表記)occupation

翻訳|occupation

関連語 せんせん 名詞

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無主物先占」の意味・わかりやすい解説

無主物先占
むしゅぶつせんせん
occupation

所有者の存在しない物を所有の意思をもって最初に占有すること。無主の動産の先占者はその所有者となる (民法 239条1項) 。無主物が不動産である場合には,その不動産は国庫に帰属し,無主物先占は認められない (2項) 。国際法上では,いかなる国の領有にも属していない地域にある国が支配を及ぼして,その領域とすること。国際法上認められた領域取得の権原の一つで,単に「先占」と呼ばれることが多い。近世初頭における地理上の発見以来,ヨーロッパ以外の地域をヨーロッパの列強植民地として獲得するために主として援用された。先占が有効となるには,国家が領有の意思をもって無主の土地を実効的に占有することが必要である。先占の主体原則として国家であるが,私人の行為であっても,国家が承認すれば国家の行為とすることができる。先占の客体は国際法上の無主の土地である。それはいまだどの国の領有にも属していない土地という意味であって,人が住んでいても国家の領土となっていなければこれを先占しうる。領有の意思は明示的な宣言,他国への通告などによって示されなければならない。最後に実効的な占有がなされなければならない。国旗を掲揚するなどの象徴的な行為のみでは実効的な占有とはいえず,当該地域への支配権を実効的に確立することが求められる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無主物先占」の意味・わかりやすい解説

無主物先占
むしゅぶつせんせん

先占

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世界大百科事典(旧版)内の無主物先占の言及

【先占】より


[無主物先占]
 無主の,すなわち,現在所有者のいない動産を,所有の意思をもって占有することをいい,これにより,その動産の所有権を取得することができる(民法239条1項)。野生の鳥獣,魚介の捕獲などがその例である。…

※「無主物先占」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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