即興曲
そっきょうきょく
impromptu フランス語
アンプロンプチュともよばれる器楽小品。とくにロマン派のピアノ曲に多い。19世紀以前には幕間劇や特殊なカノンを意味していた。しかし、今日のような意味での即興曲という表題は、1817年にチェコの作曲家ボルシジェクJan Hugo Voříšek(1791―1825)が最初に用いたといわれる。このころからロマン派の新しい様式を示すピアノ曲にこのことばが流行し、いわゆるキャラクター・ピース(性格的小品)の一つとして重要な役割を果たすことになる。シューベルトが1827年ごろに書いた八曲の即興曲がもっとも有名だが、最初の四曲(D899)は出版社がつけたタイトルである。即興曲は、実際に即興でつくられたものではなく、作曲家の頭のなかにひらめいた楽想を自由に展開した作品である。したがって形式も、三部形式(シューベルト、ショパン、フォーレ)から、変奏曲(シューマン、バラキレフ)まで多種多様なものがみいだされる。
[関根敏子]
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即興曲【そっきょうきょく】
主にピアノ独奏用の自由な形式で書かれた抒情的小品をいう。フランス語のアンプロンプチュ(アンプロンチュ)impromptuは〈即座に,即興で〉の意。元来モリエールが幕間劇をさして使ったが,音楽では19世紀のはじめ,ピアノの名手が即興で弾いた曲をこう呼び,次いで即興を思わせるようなピアノ小曲をさすようになった。シューベルトやショパンの作品が有名で,形式上の規則は特にない。
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そっきょう‐きょく ソクキョウ‥【即興曲】
〘名〙 西洋音楽で、即興的な楽想を小品形式に書いた楽曲。主として一九世紀のピアノ小品の題名として用いられたもので、ショパンやシューベルトの作品は有名。即興楽。
インプロンプチュ。〔新聞語辞典(1933)〕
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即興曲
そっきょうきょく
impromptu
19世紀の器楽曲の曲種の一つ。即興演奏によって作られるのではないが,楽想を即興的に自由に展開した小品。シューベルト,ショパンのピアノ曲がよく知られている。
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そっきょう‐きょく〔ソクキヨウ‐〕【即興曲】
即興的な気分をもつ器楽小品。19世紀ロマン派の作曲家に好まれた。アンプロンプチュ。
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そっきょうきょく【即興曲】
おもにピアノ独奏用の抒情的な小曲の一種。フランス語のアンプロンプチュimpromptuの訳。原義は〈即席〉〈準備なし〉であり,18世紀以前には即興詩あるいは劇の幕間の出し物を意味した。19世紀の初めにはピアノの名手が即興に弾いた曲をアンプロンプチュとよび,幻想曲やカプリッチョとともにその曲想が好まれたが,しだいに実際の即興演奏の結集かどうかは問わず,作曲者の心にふと浮かんだ曲想をあっさりとまとめ上げたといった雰囲気の曲をよぶようになった。
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