熟練労働者・不熟練労働者(読み)じゅくれんろうどうしゃふじゅくれんろうどうしゃ(英語表記)skilled worker, unskilled worker

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

熟練労働者・不熟練労働者
じゅくれんろうどうしゃふじゅくれんろうどうしゃ
skilled worker, unskilled worker

熟練労働者とは、一般的にいえば、一定訓練や教育を受けることによって、高度で複雑な作業を行うことのできる労働者である。これに対して、不熟練労働者とは、そのような能力をもたない労働者のことである。熟練労働者がもっとも典型的に発展したのは、道具を基本的な労働手段とする生産段階であった。道具によって物を加工するためには、その道具の操作に熟達するとともに、経験的な知識を必要とし、これを習得するためには長期の訓練が必要とされた。このため、徒弟制度が設けられ、熟練労働者の資格を得るためには、一定の期間、徒弟として訓練を受けなければならなかった。歴史的には熟練労働者とは、このような徒弟訓練を終了した労働者のみをさし、訓練・育成費の不用な不熟練労働者に対して、相対的に高賃金が支払われていた。

 分業原理を導入したマニュファクチュアは、一つの作業を分割することによって単純な労働分野をつくりだし、不熟練労働者の採用に道を開いたが、なお道具と手工業的熟練が生産の基礎であったがために、その拡大には限界があり、熟練労働者が依然として優位を占めていた。工場制度の発展は、労働を単純化、均等化することによって、このような限界を打破した。この結果、熟練労働者の比重は著しく低下し、不熟練労働者や半熟練労働者が生産の主要な担い手となった。

[湯浅良雄]

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