馬上から弓矢で牛を射る武技。源頼朝(よりとも)が1182年(寿永1)4月に金洗沢で、また同年6月には由比(ゆい)の浦で催している(『吾妻鏡(あづまかがみ)』)。このほか『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』に、源頼光(よりみつ)の一行が野飼いの牛を牛追物に射たとの記事がみえ、これは法式に基づいた馬場での競技ではないが、いわゆる追物射としての本来の姿がうかがわれる。しかし、その後は犬追物の流行によって絶えたようである。そのため具体的な内容もほとんど伝わっていないが、室町時代の故実書に拠(よ)ると、小牛の走る跡(さぐり)を馬で追い、追われた小牛が立ち向かうところを、その平頸(ひらくび)や平股(また)を目標に蟇目(ひきめ)、四目、神頭(じんどう)などの矢で射るという。
[宮崎隆旨]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…射手の賞・不賞はその乗法と射法によって決せられた。追物射(おうものい)という語から発した犬追物は古来,獣を追い射る行為をさし,平安期には牛を用いる牛追物が行われた。鎌倉時代になって犬追物が広く武士の武芸鍛練の射芸として愛好されるようになり,鎌倉中期以降形式が整ったが,後世,戦闘法の変化とあいまってしだいに衰退した。…
※「牛追物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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