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特性のない男 とくせいのないおとこDer Mann ohne Eigenschaften

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

特性のない男
とくせいのないおとこ
Der Mann ohne Eigenschaften

オーストリアの作家ローベルト・ムージル未完小説。3巻4部。1930~43年刊。第1次世界大戦前夜のウィーンを舞台にしたものだが,大半が膨大な議論や対話からなり,高度の哲学的・心理学的思索を展開,20世紀前半の時代を鋭く分析した特異な小説で,現代ドイツ語文学最高の達成の一つとされる。

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世界大百科事典 第2版の解説

とくせいのないおとこ【特性のない男 Der Mann ohne Eigenschaften】

オーストリアの作家R.ムージルの未完の長編小説。作者の死後十数年を経て再評価され,J.ジョイスやM.プルーストの小説に比すべき,20世紀の重要な作品とみなされる。第1巻(1930),第2巻(1933)が刊行され,全遺稿が整理されて全体が刊行されたのは1952年(78年に遺稿部の大幅改訂)。〈特性がない〉ということは自分の特性も含めもろもろの事が自分から遊離していることで,そのような自己の特性と現実世界の事がらを独特の仕方で,つまり可能性への感覚をもって問題化し思考する,〈特性のない男〉を主人公に,時代の混乱した姿が描かれ,状況突破の試みが追求される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

特性のない男
とくせいのないおとこ
Der Mann ohne Eigenschaften

オーストリアの作家ムシルの長編小説。第一巻1930年、第二巻の前半部のみ33年刊。長期的には1900年ころから、短期間にみれば1920年ころから構想されて、ムシルが生涯をかけてもなお未完に終わった。第一巻では、現実を可能性のほんの一部の実現した世界としかみなさない主人公ウルリヒの、この可能性を目覚ます感覚を梃子(てこ)にして、第一次世界大戦前夜のオーストリア老大国の古都ウィーンにおける支配層の閉塞(へいそく)した精神風土の大規模な分析解明が実験的に行われ、その破砕された現実の裏から自由な可能性の新風が吹き付ける。第二巻では、ウルリヒと妹アガーテとの愛の可能性が厳密に一歩一歩追求されて、神なき時代の神秘的な合一のみごとな瞬間が描き出される。[加藤二郎]
『高橋義孝他訳『特性のない男』全六冊(1964~66・新潮社) ▽加藤二郎他訳『特性のない男』全四冊(1965~66・河出書房新社)』

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