日本建築において、屋根の大棟(おおむね)両端や、降(くだり)棟・隅(すみ)棟などの端につく棟飾りの一つ。頂部に円筒状の経(きょう)の巻(まき)を3本あるいは5本のせる。獅子口の正面上方にある山形の筋(すじ)を綾(あや)筋またはシメ筋という。獅子口は『年中行事絵巻』に描かれており、すでに平安時代には用いられていたことが知られる。一般に檜皮葺(ひわだぶ)き・杮葺(こけらぶ)きの屋根で、棟を瓦(かわら)積みにした場合の棟飾りに用いられる例が多く、「紫宸口(ししんぐち)」「御所棟鬼瓦」ともいわれる。
またこれとは別に、置き花や掛け花に用いられる竹製の一重(いちじゅう)切りの花器の一つで、獅子の口状に生(い)け口を大きくあけたものも、獅子口といっている。
[工藤圭章]
…檜皮葺きや柿葺きの棟は,近畿地方では瓦を積んだ瓦棟が多く,他の地方では木でつくった箱棟が多く,両端には外形が鬼瓦に似た鬼板を用いる。鬼瓦や鬼板のかわりに,円筒形の経巻(きようのまき)と呼ばれるものを3個のせた獅子口(ししぐち)が,唐破風(からはふ)などに使われる。なお,檜皮葺きや柿葺きには降棟や隅棟はなく,また神社建築では棟に堅魚木(かつおぎ)をのせ,両端に千木(ちぎ)をあげる。…
…(2)は口を開いた阿(あ)形と,閉じた吽(うん)形に分けることができ,前者には飛出(とびで)の,後者には癋見(べしみ)の諸面があり,年たけて威力のある悪尉の諸種もここに入れてよいであろう。ほかに阿形では天神,黒髭(くろひげ),顰(しかみ),獅子口など,吽形では熊坂(くまさか)がある。能面の鬼類では女性に属する蛇や般若,橋姫,山姥(やまんば)などのあることが特筆される。…
※「獅子口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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