鬼瓦(読み)オニガワラ

デジタル大辞泉 「鬼瓦」の意味・読み・例文・類語

おに‐がわら〔‐がはら〕【鬼瓦】

大棟おおむねくだり棟の端に飾る瓦。獣面のほか蓮華文れんげもんなどがあり、鬼面がなくてもいう。
[補説]狂言曲名別項。→鬼瓦

おにがわら【鬼瓦】[狂言]

狂言。都に出てきた大名訴訟に勝って因幡いなばへお礼参りに行ったとき、鬼瓦を見て国もとの妻の顔を思い出して泣くが、太郎冠者に慰められて、笑う。

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精選版 日本国語大辞典 「鬼瓦」の意味・読み・例文・類語

おに‐がわら‥がはら【鬼瓦】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 屋根の棟(むね)のはしに置く大きな瓦。昔は魔よけのために鬼の面をかたどったものを用いたが、今はいろいろな意匠のものがある。大棟では両端に用い、降棟(くだりむね)隅棟などでは一端に用いる。
      1. 鬼瓦<b>[ 一 ]</b><b>①</b>
        鬼瓦[ 一 ]
      2. [初出の実例]「『いやあの屋根にある物は何ぞ』『あれはおにがはらといふ物でござる』」(出典:虎明本狂言・鬼瓦(室町末‐近世初))
    2. こわく醜い顔。
      1. [初出の実例]「あるものじゃ・よい衆の奥に鬼がはら」(出典:雑俳・軽口頓作(1709))
    3. 紋所の名。
  2. [ 2 ] 狂言。各流。在京中の某が訴訟もかなって帰国することになり、暇乞いに太郎冠者を伴って因幡堂参詣に行く。そして、屋根の鬼瓦を見て女房の顔にそっくりだと思い出して泣くが、もう間もなく会えると太郎冠者にいわれて、主従二人で笑う。

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改訂新版 世界大百科事典 「鬼瓦」の意味・わかりやすい解説

鬼瓦 (おにがわら)

建物の大棟や降り棟の端(はな)を飾る瓦。このため,棟端飾板の名もある。8世紀以降,建物の安穏を祈り鬼面を飾ったものが主として用いられたため,鬼瓦の名称が一般的で,鬼板とも呼ぶが,7世紀代には蓮華文で飾った。日本最古の鬼瓦は法隆寺若草伽藍のもので,複数の単弁8弁蓮華文を焼成前に彫刻している。文様構成は百済時代のものに似る。8世紀から13世紀までの鬼瓦は,まだ半肉彫風で立体感に乏しい。角をもった鬼は14世紀以降に広まるが,10世紀半ばにもわずかながら見受けられる。現在では鬼面の鬼瓦は少ないが,足元を大きく作るところに遺制が見られる。鬼面文は,本来中国からの影響であろうが,中国の鬼瓦は明確でない。直接日本に連なるのは新羅の鬼瓦である。鬼瓦の下辺は半円形にえぐるが,これは棟をまたがせるためで,隅棟の鬼瓦は両端もえぐる。瓦面に釘孔と称する孔をうがったり,背面に鈕を作ったりするが,いずれも金具で引っ張って棟へとめるための細工である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鬼瓦」の意味・わかりやすい解説

鬼瓦(建築)
おにがわら

屋根の頂にある大棟(おおむね)の両端や降棟(くだりむね)・隅棟(すみむね)の端に飾られる瓦。表面に鬼面がつけられるので鬼瓦という。中国や朝鮮、日本で古くから魔除(まよ)けとしてつけられてきた。わが国の7世紀の鬼瓦は、鬼面がつかずに蓮華文(れんげもん)が飾られるのが一般的であったが、8世紀からは鬼面のつくものが主流を占める。近世になると、鬼面のかわりに家紋や桃などの植物で飾られるものが多い。建物の大棟両端には、古代には鴟尾(しび)(鮪(まぐろ))がのせられるのが正式であった。また瓦葺(かわらぶ)きの屋根と違って、檜皮(ひわだ)葺きや杮(こけら)葺きの屋根では大棟の両端には鬼瓦でなく、獅子口(ししぐち)を飾ることが多い。この獅子口には、鬼瓦と違って上端に経の巻(きょうのまき)とよばれる筒状の飾りがつく。近世の城郭建築では、鴟尾のように鯱(しゃち)が大棟に飾られるが、下に鬼瓦も併用されている。

[工藤圭章]



鬼瓦(狂言)
おにがわら

狂言の曲名。大名狂言。領地争いの訴訟のため長期在京中の田舎(いなか)大名(シテ)が、すべてうまくかたづいたので、太郎冠者(たろうかじゃ)を連れて日ごろ信仰する因幡薬師(いなばやくし)へお礼参りにやってくる。帰ったら御堂(みどう)を建立し薬師如来(にょらい)をお招きしたいものと、参考に建物のあちこちを見て回るうち、大名がふと屋根の鬼瓦に目を留め、国元に置いてきた女房の顔そっくりだとおいおい泣き出す。もうすぐ会えるではないかという太郎冠者の慰めに気を取り直し、2人でめでたくどっと笑って終曲。これといった筋立ても機知に富んだ会話もないが、大名の温かい心根がほのぼのと伝わってくる愛すべき小品である。

[油谷光雄]

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百科事典マイペディア 「鬼瓦」の意味・わかりやすい解説

鬼瓦【おにがわら】

鬼面の形をした屋根棟(むね)の端の飾瓦。木製のものを鬼板という。《松屋筆記》によれば河伯(河の神)をかたどったものといい,一種の魔除(まよけ)であった。後には鬼面のないものでも鬼瓦,鬼板といった。同類のものに鴟尾(しび),獅子(しし)口などがある。→

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「鬼瓦」の解説

おにがわら【鬼瓦】

の一種。屋根の棟(むね)の端に取り付ける飾り瓦。鬼面の形がよく知られ、厄災よけとする。そのほか州浜(すはま)を意匠化したもの、「蔓若葉」と呼ばれる植物を意匠化したもの、「海津(かいづ)」と呼ばれるかまぼこ形のものなどがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鬼瓦」の意味・わかりやすい解説

鬼瓦
おにがわら

瓦ぶき建物の大棟 (おおむね) 両端,降棟 (くだりむね) 先端につける装飾瓦。奈良時代以降鬼面をつけたものが多いのでこの名がある。

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防府市歴史用語集 「鬼瓦」の解説

鬼瓦

 屋根のもっとも高いところの端につける、鬼の顔をかたどった瓦のことです。鬼の顔がなくても、鬼瓦と言います。

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世界大百科事典(旧版)内の鬼瓦の言及

【瓦】より

…7世紀末葉から8世紀にかけて日本に少なからず影響を与えている。また,各種の道具瓦が作られるようになり,鬼瓦が作られるのもこのころのことである。高麗初期のものは新羅の系統を引くものであるが,しだいに簡単な文様に変わる。…

※「鬼瓦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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