環境と開発に関する国連会議(読み)かんきょうとかいはつにかんするこくれんかいぎ(その他表記)United Nations Conference on Environment and Development

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

環境と開発に関する国連会議
かんきょうとかいはつにかんするこくれんかいぎ
United Nations Conference on Environment and Development

略称UNCED。国連環境開発会議、またはリオ会議ともいう。1992年6月、ブラジルリオ・デ・ジャネイロで約180か国が参加して開催された。1972年の国連人間環境会議の20周年を受けた会議である。1989年と1990年の国連総会決議により国家元首レベルが参加することとされたため、地球サミットともよばれた。

 現在の世界の最重要課題は、地球環境を保全することと開発途上国における絶望的な貧困状態を改善することであるとされる。とくに、貧困は身近な自然資源の過剰利用と汚染の垂れ流しを招き、地球環境に打撃を与えている。この間、開発途上諸国の自然および人間環境はさらに悪化し、基本的人権に値する生活を確保することが求められている。

 そのため、この会議は名称も変えて、環境と開発を総合的に扱うこととされた。会議の中心テーマは、将来の世代がその欲求を満たす能力を損なうことなく現在の世代の欲求を満たすような、環境上健全な開発を意味する「持続可能な開発」をどのようにして実現するかであった。そのために、環境と開発に関するリオ宣言アジェンダ21気候変動枠組み条約生物多様性条約および森林保全原則声明採択された。求められる行動を開発途上国が行えるようにするために、資金および技術の追加的な移転が必要とされている。この会議後に、アジェンダ21の実行を確保するための「持続可能な開発委員会(CSD=Commission on Sustainable Development)」が国連によって設置された。

 実行確保のために、5年後の1997年には国連環境開発特別総会が開かれ、また、10年後の2002年には「持続可能な開発に関する世界サミット」(WSSD=World Summit on Sustainable Development、ヨハネスバーグ会議)が開かれたが、状況はあまり変わっていない。経済、金融、政治各側面での世界的な不安定さが目だつなかで、20年後にあたる2012年6月にはリオプラス20がリオ・デ・ジャネイロで開かれた。

[磯崎博司]

『朝日新聞地球サミット取材班編『「地球サミット」ハンドブック』(1992・朝日新聞社)』『山田健治・仲健一編『地球サミットを超えて――協調分散型社会の環境プラニング』(1993・成文堂)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

環境と開発に関する国連会議
かんきょうとかいはつにかんするこくれんかいぎ
United Nations Conference on Environment and Development; UNCED

1992年6月3~14日にブラジルのリオデジャネイロで開かれた国際会議。国連環境開発会議ともいい,通称では地球サミット Earth Summitといわれる。178ヵ国が参加し,100ヵ国あまりの首脳が演説した。国連人間環境会議の 20周年を記念して国連総会が開催を決議したもので,深刻化する地球規模の環境問題に対処し持続的開発を確保するため,日本を含む約 150ヵ国が気候変動枠組条約ならびに生物多様性条約に署名した。また環境と開発に関するリオ宣言,森林に関する諸原則の声明,21世紀に向けての人類の行動計画を示すアジェンダ21が採択されたが,財政支援や技術移転の面で先進国と途上国の間で利害の対立がみられた。1993年には国連の経済社会理事会がアジェンダ21の実施状況を監視する目的で持続可能開発委員会 CSDを設置した。

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知恵蔵 の解説

環境と開発に関する国連会議

1980年代に入り、欧米では酸性雨、海洋汚染など国境を超えた環境問題が顕在化、地球規模での取り組みが必要となってきた。72年にストックホルムで開かれた国連人間環境会議から20年の節目に当たる92年6月に、ブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開催され、約180の国・地域の代表と国連機関が参加した。会議は持続可能な開発の理念の下に、開発と環境に関するリオ宣言、気候変動枠組み条約、生物多様性条約、森林保護のための森林原則声明が、採択または表明された。そのための具体的な行動計画を記したアジェンダ21が採択され、貧困の撲滅、生物多様性の保全、有害廃棄物の移動の禁止、大気保全、砂漠化の防止、有害化学物質の管理など、多岐にわたる行動原則が定められた。会議では、環境破壊を先進国の責任として資金援助を求める途上国と援助の増額を避けたい先進国が対立、南北対立の構造はその後の国際会議でも再現。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)

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