生徒会活動(読み)せいとかいかつどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「生徒会活動」の意味・わかりやすい解説

生徒会活動
せいとかいかつどう

中・高等学校段階における教科外活動、すなわち、特別活動の一種。全校生徒による自治的、組織的な集団活動であるが、学校の立場では、学級活動(高校ではホームルーム)、学校行事などと並んで、教育課程上に位置づけた指導が行われることになっている。

[井上治郎・下村哲夫]

活動内容と組織

生徒会の活動内容には、大別すると次の4種類のものがある。

(1)学校における生徒の生活の改善と向上を図る活動
(2)生徒の諸活動についての連絡調整に関する活動
(3)体育祭や文化祭などの学校行事への協力に関する活動
(4)ボランティア活動など社会参加に関する活動
 このうちのとくに(1)は、生徒会の中心的な活動内容をなすもので、たとえば、学校生活におけるよき規律校風確立環境保全美化、生徒の教養情操の向上、好ましい人間関係を深めるための活動や身近な問題の解決を図るための活動などを、継続的かつ具体的に展開するのが通常である。

 これらの諸活動を展開するための生徒会の組織には、生徒総会、生徒評議会、生徒会役員会、各種委員会などを置くことが多い。生徒総会は全校生徒よりなる生徒会の最高決議機関であり、たとえば、年間の活動計画の決定、会長以下の役員の承認、生徒会規約の改正などを行う。生徒評議会は、生徒会の運営や生徒の諸活動間の連絡調整などを行う。生徒会役員会は、生徒会でおもな役割を担当する者が、それぞれの分担する諸活動について情報を交換し、生徒会運営の日常的な実務について協議し、その円滑な運営にあたる。また、各種委員会は、それぞれが分担する活動の企画立案や指導にあたるものである。なお、ホームルームは、教育課程上は生徒会活動と区別されているが、実質的にはその下部組織として位置づけられ、各種の役員などの選出母体ともなっている。

[井上治郎・下村哲夫]

歴史的経緯

わが国で生徒会が教育課程の一環として位置づけられるようになったのは、第二次世界大戦後である。敗戦直後、旧制中学校女学校などで、戦時教育に対する批判や戦中・戦後における教師の言動に対する不信から生徒の政治的活動が活発になり、1949年(昭和24)には文部省(現文部科学省)も「新しい中学校の手引き」で民主的市民の育成のために、生徒の自治活動の必要性を説いた。51年に改訂された学習指導要領では、児童会(小学校)と生徒会(中・高校)が自治活動として教育課程に位置づけられ、生徒の学校活動への参加による民主主義原理の理解が重視された。生徒会が校長から一定の権限を認められ、立法、執行の組織をもち、ときに生徒裁判組織をもったり、アメリカの生徒会議student councilを模したものも生まれた。

 1958年(昭和33)の学習指導要領改訂で一時自治活動は後退し、生徒会の役割は校内の生活改善、仕事の分担処理などにとどめられた。同時にこの時期から、厳しい受験戦争のなかで生徒会活動を敬遠する傾向も生まれ、総じて生徒の関心も薄れ始めた。しかし、1960年代後半から70年代後半のいわゆる学園紛争に際しては、各地で生徒会が大きな役割を果たした。そうした経緯もあって、当時の文部省は高校生の政治活動にも厳しい規制を加えるようになった。その後は、全般的に生徒会活動に積極的に参加する生徒も減少し、生徒会活動は沈滞期にあるとみなければなるまい。

[井上治郎・下村哲夫]

問題点

生徒会活動の現状には、各学校間で大きな差がある。少数ではあるが、活発な活動を展開している学校がある反面、役員への立候補者すら思うにまかせない学校もみられる。また、一部では、学校の指導に反する活動に走ろうとする傾向なども指摘されている。生徒会活動の民主的運営には、とくに学校の適切な指導が望まれるゆえんである。

[井上治郎・下村哲夫]

『坂本光男著『生徒会の自治をかれらに』(1978・明治図書出版)』『藤田喜久著『児童会の指導』(1982・あゆみ出版)』『全国高校生活指導研究協議会編『全校集団づくりと生徒会行事』(1985・明治図書出版)』『遠藤芳信著『生徒会に君の力を』(1987・明治図書出版)』『宮原廣司著『生徒会の流れを君が変える』(1987・明治図書出版)』『森田俊男・三宅良子・矢崎峻作編『自由と自治と高校生活――校則・「日の丸・君が代」・自主活動』(1991・労働旬報社)』『坂本秀夫著『生徒会の話――生徒参加の知識と方法』(1994・三一書房)』『日高教高校教育研究委員会編『高校生の自主活動と学校参加』(1998・旬報社)』『広中健次・金子さとみ著『学校はだれのもの!?――兵庫・尼崎東、京都・桂、埼玉・所沢高校ドキュメント』(1999・高文研)』

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