日本大百科全書(ニッポニカ) 「生息場所」の意味・わかりやすい解説
生息場所
せいそくばしょ
生物がすんでいる場所のこと。すみ場、すみ場所、生育地、生育場所ともいわれる。この語は普通、個体あるいは個体群に対して用いられ、これらが外界とかかわりをもちながら生活している具体的な場所を意味する。しかし、生物の多様な生息場所を比較して、類型的に把握されたものに対してこの語が用いられることもある。
生息場所は、生物にとって生活するのに必要な隠れ場や食物を得る場であると同時に、ほかの生物の食物や隠れ場となることによって、ほかの生物の生活に必要な資源を供給する場でもある。生息場所は非生物的要素と生物的要素をもち、前者には地理的位置、地形、気候などが含まれ、後者には隠れ場を提供したり、食う―食われる、あるいは競争関係にある生物が含まれる。
対象とする生物の大きさや生活様式によって、生息場所はその大きさ、分布様式が異なり、また尺度のとり方によって、海洋、湖沼、河川、森林、草原、砂漠といった大きなものから、ある特定の樹木、さらにはその空洞や根元といった微小なものにまで区分される。生物が生息場所をどのように選択し、そのことが生物群集の構造や安定性とどのようなかかわりをもつかといったことは、人間における土地利用と似た重要な問題であるが、今後の研究にまつところが多い。
[安部琢哉]