日本大百科全書(ニッポニカ) 「生産階級・不生産階級」の意味・わかりやすい解説
生産階級・不生産階級
せいさんかいきゅうふせいさんかいきゅう
productive class, unproductive class 英語
produktive Klasse, unproduktive Klasse ドイツ語
classe productive, classe nonproductive フランス語
本来は物的な財貨を生産する労働を生産的労働として、このような物的財貨を生産する階級を生産階級といい、それ以外の階級を不生産階級という。資本主義以前の社会では、生産階級は奴隷社会の奴隷や封建社会の農奴であった。このような生産階級としての奴隷や農奴は、自らが消費する財貨を生産するだけでなく、奴隷所有者や封建領主、さらには直接物的生産に従事していない家臣・僧侶(そうりょ)・商人など不生産階級の消費する財貨をも生産した。資本主義社会では、生産階級は資本のもとで農業・工業・運輸など直接生産に携わり利潤を生み出す労働者である(管理労働など間接的・補助的労働に従事する労働者も含む)。ケネーは、剰余を農業のみに発生するものと考え、農民階級を生産階級とし、工業・商業その他サービス部門に従事する人々を不生産階級とした。それに対してA・スミスは、生産的労働を農業労働だけでなく広く物的生産に携わり利潤を生み出す労働であると考え、農業だけでなく工業の生産者も生産階級であるとした。ところで資本主義社会では、資本に利潤をもたらす限り、物的生産部門だけでなく商業・金融その他のすべてのサービスを含めた非物的生産部門の労働をも生産的労働であると考えるところから、生産階級の概念は物的生産に従事する労働者という本来の意味を失い、すべての労働者に拡大して考えられるようになった。
[藤田勝次郎]