日本大百科全書(ニッポニカ) 「産科ショック」の意味・わかりやすい解説
産科ショック
さんかしょっく
obstetric shock
一般に産科領域でみられるショックの総称であるが、実際には妊産婦が循環不全によってショック状態に陥った場合をさしている。胎児や新生児のショック状態は、広く仮死という概念のなかに含まれている。
妊娠、分娩(ぶんべん)および産褥(さんじょく)時に陥るショック状態の大半は、大量の出血があった場合にみられ、出血性ショックとよばれる。原因としては子宮外妊娠の破裂、流産をはじめ、前置胎盤、胎盤早期剥離(はくり)、子宮破裂、静脈瘤(りゅう)の破裂、血液凝固障害などがあげられる。このほかに、腰椎(ようつい)麻酔に伴うものや胎盤用手剥離などを行った場合、仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群(妊娠子宮が下大静脈を圧迫して血圧が下降する)などによる非出血性ショックもある。
産科ショックの特徴としては、(1)失血以外の原因による場合もあるので、止血と輸血以外の治療も必要となる、(2)原因の除去によって速やかに治癒する場合が多い、(3)胎児や胎盤のことを念頭に置く必要がある、などがあげられる。
[新井正夫]