日本大百科全書(ニッポニカ) 「田中惣五郎」の意味・わかりやすい解説
田中惣五郎
たなかそうごろう
(1894―1961)
昭和期の歴史家。明治27年3月14日、新潟県中頸城(なかくびき)郡で自作農の三男として生まれる。高田師範を出て小学校教員となり、中等教員の資格も得る。1922年(大正11)上京、私立順天中学に赴任し敗戦まで勤務を続け、この間、下中弥三郎(しもなかやさぶろう)の啓明会(けいめいかい)の運動にも参加。また『日本叛逆(はんぎゃく)家列伝』(1929)、『東洋社会党考』(1930)をはじめ、『明治維新史読本』(1937)など、一貫して反権力・反体制を志向し、社会の発展に着眼した著作を発表した。戦後は、鎌倉アカデミアや明治大学の教壇に立ち、『日本ファシズムの源流』(1949)、『資料日本社会運動史』(1947~48)や、『幸徳秋水』(1955)、『吉野作造』(1958)、『北一輝(いっき)』(1959)などの人物研究を刊行し、生涯を在野の歴史家として活躍した。昭和36年9月4日死去。
[松島榮一]