男性を優位に女性は劣位に位置づけて男女平等を否定し、経済的、政治的、社会的、文化的な女性差別を許容する価値観。
「男尊女卑」ということばは、中国の戦国時代(紀元前5世紀から紀元前221年)に活躍した諸子百家(しょしひゃっか)の一人である列子(れっし)の著書である『列子』の「天瑞篇(てんずいへん)第一」に「男女之別、男尊女卑」として出てくる。「尊・卑」は、「高い・低い」という意味である。
日本は、8世紀前後に中国から律令制を取り入れたことに伴い、中国の律令制に内在していた「男尊女卑」観念が支配層に浸透した。時代とともに「男尊女卑」観念は被支配層にも浸透し、近世にはそれが定着していった。
明治政府は、近代的な法治国家の形成において西欧近代法を継受したが、当時の西欧近代法は、「男尊女卑」観念に基づく家父長制の法体系であった。そして、明治政府は家父長制的な「家」制度を通して国民を統治しようとしたので、「男尊女卑」的な法によって、「男尊女卑」観念は、日本社会の隅々まで深く浸透した。
「男尊女卑」観念は、人々の意識においても、日本社会に限らず、近代ブルジョア革命を支えた人権思想をその基本にもつ資本主義社会においても、いまなお根強く存在している。
[神尾真知子 2023年4月20日]
『小林信明著『新釈漢文大系22 列子』(1967・明治書院)』▽『成清弘和著『男尊女卑 法の歴史と今後』(2021・明石書店)』▽『福永光司訳注『列子 1』(平凡社・東洋文庫)』
出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報
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