日本大百科全書(ニッポニカ) 「癌リスク検査」の意味・わかりやすい解説
癌リスク検査
がんりすくけんさ
血液中に存在する微量アミノ酸の濃度を測定して、臓器別の癌のリスク(可能性)を予測するスクリーニング検査。早期癌の発見も可能であるとして、人間ドックのオプションとして採用する健診機関も増えている。
健康な人では血液中のアミノ酸濃度が一定に保たれるようにコントロールされているが、病気の人、とくに癌患者では特有のアミノ酸濃度のバランスの変化がみられる。この違いを利用して統計的に解析することで、癌のリスクを予測(評価)する。この場合のリスクとは、現在癌である可能性すなわち確率のことをいい、癌であることを判定するものではない。その一つとして、味の素(あじのもと)グループは複数の医療関係機関と協力しデータを集めて解析を加え、アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AICS)とよぶ検査方法を開発した。AICSでは、各臓器別の癌のリスク(確率)を、ランクA(0.0~4.9)、ランクB(5.0~7.9)、ランクC(8.0~10.0)の3ランクに分類して、0.0~10.0の数値で報告する。Cがもっとも癌のリスクが高い。
対象となる癌は、男性では、胃癌、肺癌、大腸癌、膵臓(すいぞう)癌、前立腺(せん)癌の5種、女性では、胃癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、乳癌、子宮癌・卵巣癌の6種となっており、これらの癌のリスクについて予測できる。女性の乳癌、子宮癌・卵巣癌の2種に限定した検査もあるが、子宮癌・卵巣癌については、子宮頸(けい)癌、子宮体癌、卵巣癌のいずれかの癌であるかは評価できるが、個々のリスクの区別はできない。また対象年齢は、胃癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、乳癌は25~90歳、前立腺癌は40~90歳、子宮癌・卵巣癌は20~80歳の妊娠中を除く人となっている。1回の採血は5ミリリットルほどの少量ですみ、簡易に複数の癌について同時に検査することが可能である。
[編集部 2016年10月19日]