白山比神社(読み)しらやまひめじんじや

日本歴史地名大系 「白山比神社」の解説

白山比神社
しらやまひめじんじや

[現在地名]鶴来町三宮町

手取川右岸の独立丘陵舟岡ふなおか(一七八・七メートル)の南方に位置する旧国幣中社。現在も「白山さん」として親しまれる。祭神は菊理媛・伊弉諾尊伊弉冉尊。白山禅頂の奥宮に対して白山本宮を称し、白山宮・下白山ともよばれ、加賀一宮とされた。明治四年(一八七一)現社名となる。白山は、養老元年(七一七)泰澄によって開かれたとされ、その後白山信仰は全国に広まる。白山神社の所在に限っても、大正二年(一九一三)調査の「内務省神社局明細帳」に四三府県二千七一六社の存在が確認される。当社の所在地については、初めの鎮座地を舟岡山とする伝えもあるが(三州志)、当初は手取川右岸の安久濤あくどヶ淵(現在の白山町古宮公園付近)にあったとされ、文明一二年(一四八〇)一〇月一六日「今町公人道徳之家」からの出火で本宮正殿・塔・講堂・大拝殿・常行堂などを焼失した際、社家・寺家と神体・本尊を現社地のある三宮さんのみやに移転(白山宮荘厳講中記録)、現在に至る。

〔神階叙位と加賀馬場禅定道〕

「延喜式」神名帳の石川郡一〇座のうちに「白山比神社」とみえ、武田家本は「シラヤマヒメ」と訓ずる。「文徳実録」仁寿三年(八五三)一〇月二二日条に「白山比神」とみえ、従三位に叙せられ、「三代実録」天安三年(八五九)正月二七日条では、白山比女神が正三位に進んでいる。以後の神階叙位の経緯は明確でないが、寛平九年(八九七)に従二位(「日本紀略」同年一二月三日条)、天慶三年(九四〇)に正二位(「園太暦」貞和三年一二月二四日条)に進んだと推測される。

白山禅定道の根拠地となったのが白山三馬場(馬場とは里宮の所在地で、登拝者の下馬地とされる)で、「白山之記」によると加賀馬場越前馬場美濃馬場からなり、白山本宮を出発点とする加賀馬場は三馬場からの参詣が重なった場合、本馬場として加賀馬場先達が御戸を開けるとされている。加賀馬場に位置した加賀下山七社(白山七社)は、白山本宮・金剣きんけん宮・三宮、岩本いわもと(現辰口町)と中宮・佐羅さら(現吉野谷村)・別宮(現鳥越村)からなり、前四社は白山本宮を中心とする本宮四社、後三社は中宮を中心とする中宮三社と称した。両者は互いに独自の地域で政治的結集と信仰圏を形成し、ゆるやかな結合を構成していたと考えられる。白山七社は天台宗総本山延暦寺の配下に組込まれてのち、日吉七社にならって構成されたと思われる。一説に白山本宮が同寺末となったのは久安三年(一一四七)四月二八日とされ(「神官上道家系譜」白山比神社文書、「神皇正統録」)、延暦寺内部には白山別当などの役職が置かれ、別当白山はくさん寺を中心に天台系寺社として整備されていった。


白山比神社
はくさんひめじんじや

[現在地名]白山町南出 山尾田

南出みなみでの東南山上にある。もと小倭おやまと郷の郷社で、祭神菊理比売命ほか九座。白山妙理大権現本記(成願寺蔵)によると、天文二二年(一五五三)この地にあった若宮八幡宮社僧円乗坊珍徳の加賀白山権現の勧請によって小倭巽の風神森に建立された七所の白山権現の第一と伝える。すでに風神森には風宮八風神が鎮座していたので、山号を八雄田山と称したという。しかし明応三年(一四九四)の小倭百姓衆起請文(成願寺文書)に「別而山雄田白山」「別者当所(小倭郷)白山妙理権現」とみえる。


白山比神社
はくさんひめじんじや

[現在地名]白山町川口 山尾田

白山町と一志町との町界をなす通称白山の山頂に鎮座。もと川口かわぐち村と井生いう(現一志町)の氏神であった。菊理比命を中に、伊弉諾命・伊弉冊命を祀る、いわゆる白山三所権現である。町内の七白山のうち当社のみ白山権現を祀るので正白山と称した。

貞享三年(一六八六)の白山妙理大権現本記(成願寺蔵)には天文二二年(一五五三)南出みなみで村の若宮八幡宮の社僧円乗坊珍徳が加賀の白山へ参籠して勧請した七白山の一社という。しかし山田野やまだの家城いえきの白山神社はすでに鎌倉末および南北朝時代に社殿建立がみられるので、天文二二年鎮座は単なる伝説にすぎず、さらにさかのぼるであろう。


白山比神社
しらやまひめじんじや

[現在地名]岩国市横山二丁目

横山よこやまの中央、上口かみぐち下口しもぐちとの境に城山しろやまを背にして鎮座。単に白山はくさん神社とも称し、白山比命・菊理媛命・大己貴命を祭神とするので、白山三所大権現ともいう。旧県社。

社伝に貞観一八年(八七六)加賀国の白山神社を勧請、元慶八年(八八四)社殿を建立したが、応安年中(一三六八―七五)にことごとく焼失したという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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