中国、晩唐の文学者。字(あざな)は逸少(いっしょう)、のち襲美(しゅうび)と改めた。襄陽(じょうよう)(湖北省)の出身。867年(咸通8)の進士。唐王朝最末期の爛熟(らんじゅく)した時代に、身分の低い家柄に生まれたため、当時の現実を鋭く認識した作品を残した。尊敬した先輩詩人、白居易(はくきょい)がつくった一連の社会批判詩「新楽府(しんがふ)」に倣って、皮日休にも「正楽府(せいがふ)」10首の連作があり、当時の暗黒社会への深い憤りがうかがえる。彼が黄巣(こうそう)の樹立した政権に参画して翰林(かんりん)学士となったことを踏まえて、近来、中国においてはその「人民性」「社会性」が高く評価される詩人である。しかしその一面で、友人の陸亀蒙(りくきもう)との贈答詩集『松陵集(しょうりょうしゅう)』10巻にみられるように、山水自適の娯(たの)しみを詠じるのもまた、白居易の閑適詩(かんてきし)の側面を継承するものである。『皮子文藪(ひしぶんそう)』10巻がある。
[野口一雄]
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中国,晩唐の詩人。字は逸少,のち襲美。襄陽(湖北省)の人。初め郷里の鹿門山(湖北省)に隠棲していたが,のちに官途に就き太常博士になった。黄巣の反乱のとき,反乱側の政権に加担したが,のち黄巣に疑われて殺されたという。陸亀蒙との唱和詩を集めた《松陵集》10巻が有名である。また,白居易を崇拝して,その〈新楽府(しんがふ)〉の精神を受け継いだ社会詩をも残しており,〈正楽府(せいがふ)〉10首が知られている。《皮子文藪》10巻が伝わる。
執筆者:荒井 健
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