食の医学館 「皮膚疾患」の解説
ひふしっかん【皮膚疾患(湿疹、じんま疹、虫刺され)】
《どんな病気か?》
〈かゆみを特徴とするポピュラーな皮膚病〉
湿疹(しっしん)は、アレルギーを含むさまざまな原因によって起こる皮膚のかゆみをともなう炎症性反応で、皮膚が赤く腫(は)れたり、ぶつぶつや水ぶくれができたり、かさついたりします。よくある皮膚疾患ですが、アレルギー体質の人などは、とくにできやすくなります。
じんま疹(しん)もまた、たいへん多い皮膚の病気で、いろいろな原因で起こりますが、食べものや物理的な刺激が抗原(こうげん)となってアレルギーを起こすものと、アレルギーではなく、抗生物質(こうせいぶっしつ)や精神的ストレスによって起こるものがあります。
虫刺(むしさ)されは蚊(か)やブヨ、ダニ、ノミといった昆虫に吸血されて起こるものや、毛虫の毒針毛が皮膚に刺さって起こるものがあります。
虫に刺されたら、まず傷口をせっけんで洗い、どんなにかゆくても、かきむしったりせず、冷やしてかゆみや炎症をとりましょう。家で手当てをして、かゆみ、痛み、腫れなどがおさまれば心配ありません。息苦しさなどの症状がでてきたときは、すぐ病院へいきましょう。
湿疹、じんま疹、虫刺されは、いずれもかゆみをともなうのが特徴です。
《関連する食品》
〈ファーストフードやダイエットが亜鉛の不足をまねく〉
○栄養成分としての働きから
皮膚を健康に保つためには、新しい細胞が次々に生まれる必要があります。体の中で、細胞の新生が行われているところに不可欠なのが亜鉛(あえん)です。新しい細胞は、遺伝子(いでんし)情報をコピーしたり、たんぱく質を合成するといった化学反応によってつくられていきます。
亜鉛は、この反応をつかさどる酵素(こうそ)の必須成分なのです。
また、亜鉛が欠乏すると、皮膚のバリア機能が低下し、細菌などが侵入しやすくなります。
しかし、最近の日本では、不規則な食事や栄養バランスの悪いかたよった食事、過激なダイエットなどで、亜鉛不足の人がふえています。
湿疹やじんま疹がでやすかったり、虫刺されのあとがなかなか治らないという人は、亜鉛が不足しているかもしれません。
〈亜鉛の宝庫のカキ、ビタミンE、Cなどを含む食品をとる〉
亜鉛を効率的に摂取するには、カキがおすすめです。牛もも肉やレバー、ウナギなどの食品にも亜鉛が含まれていますが、含有率はカキがダントツで、100g食べれば1日の推奨量(13mg/日)にいたるほどです。
また、亜鉛とともに、皮膚を健康に保つために欠かせない栄養素が、ビタミンEとC、B群の仲間であるビオチンです。
抗酸化作用のあるビタミンEやCには、皮膚の老化を防ぎ、正常に保つ働きがあります。Eやビオチンが不足すると皮膚炎を起こしやすくなるので、日ごろから十分にとるようにしましょう。
ビタミンEはアーモンドなどのナッツ類に、Cはイチゴなどくだものに多く含まれていますが、EとCはいっしょにとると効果が高まるので、EもCも含むカボチャ、サツマイモ、ホウレンソウ、ブロッコリーなどの野菜を利用すると効率よく摂取できます。ビオチンはレバーやイワシ、ダイズ、たまご、タマネギなどに多く含まれています。
〈不飽和脂肪酸はバランスよく摂取する〉
アレルギー性の湿疹やじんま疹には、γ(ガンマ)―リノレン酸も効果があります。γ―リノレン酸はかつてビタミンFとも呼ばれた不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)の1つで、生体調節ホルモンであるプロスタグランジンの原料となります。
脂質に含まれる各種の脂肪酸から合成されるプロスタグランジンには、体の各組織の働きを調節する働きがあり、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚炎を予防したり改善することで知られています。γ―リノレン酸は天然の食品にはあまり含まれていませんが、母乳やツキミソウ油に多く含まれています。
また、γ―リノレン酸とは別な系列に分類される脂肪酸IPA(イコサペンタエン酸)にも、皮膚疾患を抑える働きがあります。IPAはハマチ、イワシ、ブリなど背の青い魚や、キンキ、マグロのトロなど脂肪の多い魚に多く含まれています。
脂肪酸の摂取では、この両方をバランスよくとることがたいせつで、とくにγ―リノレン酸をとりすぎると、逆にアレルギー疾患を悪化させることもあるので注意が必要です。
○漢方的な働きから
皮膚疾患のかゆみには、モモの葉やクマ笹のエキスがよく効きます。患部が小さければ、エキスを水で適量に薄め、ガーゼなどにしみ込ませて湿布(しっぷ)します。
患部が全身にわたる場合は、モモの葉やクマ笹風呂がいいでしょう。薄めたエキス800ccをぬるめの風呂に入れ、1回につき最低5分間の入浴、これを2回以上くり返します。