盆踊り唄(読み)ぼんおどりうた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「盆踊り唄」の意味・わかりやすい解説

盆踊り唄
ぼんおどりうた

日本民謡の分類上の1種目。旧暦7月15、16日の盂蘭盆会(うらぼんえ)を中心にして、夜間、死者や先祖の供養をするため歌い踊られてきた踊り唄の総称

 盆踊りと盆踊り唄の母体には次の三つが考えられる。〔1〕夏「虫送り」という害虫を村内より追い出す習俗があり、この行事を、死を招く悪霊やたたりをおこす悪霊を追い払うために用いた。〔2〕イネの開花時期に田の神に豊作を祈って踊りを奉納する「豊年踊り」の習俗があり、これが盆と時を同じくするため、先祖の霊の供養に歌い踊るようになった。〔3〕旧暦7月十五夜の満月の月明かりの下で男女が集まり、歌い踊るなかで互いの配偶者を求め合う歌垣(うたがき)的な習俗があり、それがそのまま盆踊りに流用されていった。これら三つが絡み合って盆踊りが派生したようだが、信仰心が薄れるにつれて仏教的ではなくなり、唄も農民の娯楽の夏の踊り唄になっていった。そのため初期は「虫送り唄」や「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」であったものが、のちには和讃(わさん)や御詠歌的な「盆踊り口説(くどき)」へと移行し、さらに娯楽色の濃い流行(はやり)唄の転用にとなっていった。

 現在歌われる盆踊り唄の数はきわめて多く、その種類もさまざまであるが、歌詞の面から次の2種に大別できる。〔1〕栃木の『八木(やぎ)節』や大阪の『河内(かわち)音頭』などのように七七または七五調のことばを連綿とつなげる口説(くどき)形式と、〔2〕徳島の『阿波(あわ)踊』や岐阜の『郡上(ぐじょう)踊』などのように七七七五調やその他の短詞形を歌う小歌(こうた)形式で、数量的には後者が圧倒的に多い。旋律面では、前者は歌詞に重点が置かれるため比較的単調なのに対し、後者は囃子詞(はやしことば)などが入り、変化に富んでいる。いずれもリズムは規則的な拍節感の「八木節様式」である。

竹内 勉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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