相互主義(読み)ソウゴシュギ(英語表記)reciprocity

翻訳|reciprocity

デジタル大辞泉 「相互主義」の意味・読み・例文・類語

そうご‐しゅぎ〔サウゴ‐〕【相互主義】

principle of reciprocity
外交・通商関係において、相手国の自国に対する待遇と同等の待遇を与えようとする主義。
外国人に権利を与える際、その外国人の本国が自国民に同等の権利を与えることを条件とする主義。

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精選版 日本国語大辞典 「相互主義」の意味・読み・例文・類語

そうご‐しゅぎサウゴ‥【相互主義】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] principle of reciprocity の訳語 ) 自国人が外国で与えられている範囲内で、外国人にも同様の権利を認めるとする主義。条約で定める場合と国内法で定める場合とがある。
    1. [初出の実例]「両締約国の一方の外交官及領事館は相互主義に従ひ」(出典:哥倫比亜共和国修好通商航海条約(明治四一年)(1908)二条)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「相互主義」の意味・わかりやすい解説

相互主義
そうごしゅぎ
reciprocity

自国が他国に対して有する権利・義務利益・負担を、他国が自国に対して有するそれらのものと均衡がとれるようにすべきであるという考え方。国際法上、条約を作成するうえでの基本的な指針の一つとなる。また、条約によらない場合でも、国内法において、外国人、外国法人、外国のものなどの扱いを定める場合に、その外国が自国民、自国法人、自国のものなどに対して同様の扱いをすることを条件として、権利や利益を与えることもある。

 日本では、民法第3条第2項は、法令または条約の規定により禁止される場合を除き、外国人も日本人と同じ私権を享有することを定めている。日本法上、相互主義に基づかないで私権の制限をしている例(船舶法1条、航空法4条、鉱業法17・87条等)もあるが、相互主義に基づいて私権を制約している例としては次のようなものがある。外国人土地法第1条は、日本人・日本法人に対して土地に対する権利の享有を禁止または制限している国の国民・法人に対しては、日本にある土地について同一または類似の禁止や制限をすることができる旨規定している。また、国家賠償法第6条は、外国人が被害者であるときは相互の保証があるときに限り同法の適用があることを定めている。そのほか特許法第25条も、日本に住所居所を有しない外国人や、日本に営業所を有しない外国法人は、その属する国が日本国民に対して同一の条件で特許権その他特許に関する権利の享有を認めていないときには、それらの権利の享有を認めない旨規定している(意匠法68条3項、商標法77条3項、実用新案法2条の5第3項等も同じ)。

 外国判決承認および執行の条件としても、民事訴訟法第118条4号および民事執行法第24条5項は、相互の保証を条件としている。これについて、最高裁判所の判例によれば、日本と重要な点で異ならない条件の下に日本の判決効力を認めている場合には、相互の保証があるものと扱うとされている(最高裁判所昭和58年6月7日判決、民集37巻5号611頁)。

[道垣内正人 2022年4月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「相互主義」の意味・わかりやすい解説

相互主義
そうごしゅぎ
reciprocity principle

相手国が与える相当の保証・給付や,同種の行為の程度に応じて等価の権利・利益の許与,義務・負担の引受けを保証しあい,相互の間に待遇の均等を維持する関係に立つことをいう (相互主義の積極的機能) 。たとえばガットは自由貿易を促進するために,関税の軽減,数量制限その他の非関税障壁の除去について無差別原則の適用を定めて市場参入と貿易譲許での相互主義を確保し,締約国間の待遇の平等をはかろうとしている。他方で,相互主義は相手国が待遇の均等性を保証しなければ,許与した権利・利益の撤回,復仇,報復などの対抗措置をとる自由としても援用される (消極的機能) 。こうした特徴を有する相互主義は,外交・領事特権免除,犯罪人引渡し,外国人の入国と在留,交戦法規の分野において伝統的にみられるが,とりわけ国際経済法について顕著である。最近ではアメリカとヨーロッパ共同体 ECが日本に対して輸出の自主規制,政府助成・保護の撤廃,輸入による内需拡大,内国市場の開放など日本の貿易慣行の是正と産業構造の改編を迫り,これが履行されないと報復措置をとるとしたが,これは相互主義の消極的機能の具現化にほかならない。

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百科事典マイペディア 「相互主義」の意味・わかりやすい解説

相互主義【そうごしゅぎ】

二国間交渉において,双方の市場を同等に開放しようとする考え。1980年代に日本の貿易黒字が顕著になったため,1988年10月に当時のEC委員会は相互主義について公式見解を発表,さらに米国の包括通商法(1988年新通商法)も数ヵ所で相互主義について言及している。背景には,当時の国際的な通商協定はGATTだったので,多国間交渉では時間がかかりすぎ,紛争処理には二国間交渉の他になかったこと,さらに適度に自国産業の保護ができることが挙げられる。→ウルグアイ・ラウンド世界貿易機関

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保険基礎用語集 「相互主義」の解説

相互主義

保険事業の経営は相互組織の団体を保険者として行うことが望ましいとする主義のことです。つまり第三者が営利を目的として資本を投下し保険者となって保険事業を行うのではなく、保険保護を必要とする人々が直接保険者たる団体を組織し、自分たちのために保険事業を行うのが良いと考える主義です。

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世界大百科事典(旧版)内の相互主義の言及

【外国人】より

…第3期は,排外的差別扱いの時代で,人間としては対等と認めたが,権利や保護を限定的にしか与えず,多くの義務を課した。第4期は,相互主義の時代で,外国人を自国民と平等な地位におこうとはするが,相手国が自国民に権利と保護を与えることを条件とした。第5期は平等主義である。…

※「相互主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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