真理の探究(読み)しんりのたんきゅう(英語表記)De la recherche de la vérité

日本大百科全書(ニッポニカ) 「真理の探究」の意味・わかりやすい解説

真理の探究
しんりのたんきゅう
Recherche de la vérité

フランスの哲学マルブランシュ主著。1674~75年に刊行された二巻本は激しい論争を生み、さまざまな批判に答えて77年に『解明』が付加された。副題に「人間精神の本性と諸学問における誤謬(ごびゅう)を避けるためになすべきその使用法が論じられる」とあるように、最初の2巻は、人間の諸能力を考察し、真理探究の方法を論じる。他方、第3巻では、中心が方法論から形而上(けいじじょう)学に移り、機会原因論の立場に説明が加えられるとともに、「万物を神のうちに観(み)る」という有名な認識説が確立される。すなわち、本書によれば、精神が物体という異種実体を認識するのは、神の理性内における物体の「イデア」(とくに「叡知(えいち)的延長」)の直観媒介によるとされる。

[香川知晶]

『竹内良知訳『真理の探求』(1949・創元社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真理の探究」の意味・わかりやすい解説

真理の探究
しんりのたんきゅう
De la recherche de la vérité

フランスの哲学者ニコラス・マルブランシュの処女作で代表作。正式の書名はさらに「そこで人間精神の本性と,学問において誤りを避けるためになすべきその用法が扱われる」と続いている。 1664年にデカルトの『人間論』 De l'hommeに触れて哲学に開眼した著者が続く5年間に数学,自然学から道徳,形而上学にわたる全領域の研究を集中的に行い,そのなかでおそらく 68年頃着手し,73年に第1巻を完成 (1674初版) した。第2巻は 75年に出版したが,この2巻に感覚,想像力,純粋悟性,傾向性,情念,方法を主題とする6編が収められ,マルブランシュの『方法叙説』と呼ばれる。そしてこれらの第3版 (77) には学者らの駁論や質問に答えた 16の『釈義』の第3巻が付せられ,著者の生前に6版を数え,デカルト哲学とキリスト教を結合し,第6編には偶因論 (機会原因論) を明確に打出した。その独創性ゆえにあらゆる方面から攻撃を受け,著者の残りの生涯は論争に彩られた。特に 79年からの A.アルノーとの論争は激しく,アルノーの力で 90年には禁書目録に載せられるにいたった。

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