日本大百科全書(ニッポニカ) 「真空乾燥」の意味・わかりやすい解説
真空乾燥
しんくうかんそう
vacuum drying
熱に敏感で高い温度で取り扱うことができない材料を真空(減圧)低温下で乾燥することをいい、従来から比較的広く用いられてきた。操作圧力は大気圧以下200~300ヘクトパスカルまでのことが多い。
[河村祐治]
原理
排気できる密閉容器中に水を入れた皿を置き、容器内の大気を排気減圧してゆくと、水はしだいに蒸発拡散しやすくなる。熱の供給がないか不十分である場合には、蒸発潜熱が不足し、これを補うために水や容器の温度は低下してゆく。一般に行われている真空乾燥は総体的にこの現象を利用しており、原料中の水分が多い間、比較的低温でこれを乾燥させることができる。
真空中における乾燥操作ではあるが、容器内には一般には残留空気と蒸発水蒸気が共存しており、その割合は操作条件によって変化する。これは操作圧力とは無関係に蒸発温度が定まることを意味する。これに対して、容器内の空気が十分少なくなり水蒸気一成分系とみなせる場合には、水の蒸発は に示す平衡関係に従うこととなる。操作は気液平衡線上でおこり、操作圧力が決まれば蒸発温度は一義的に定まる。
[河村祐治]
真空凍結乾燥
三重点以下の圧力では相変化は固気平衡線上で生じ、水分は固相(氷)から昇華によって直接気化除去される。このような昇華による脱水乾燥法を真空凍結乾燥vacuum freeze dryingとよんでいる。この方法によれば、原料(液、泥状あるいは固体材料)は凍結状態下で操作されるため、脱水に伴って煮つまりや表面硬化などの現象がおこらず、材料の形状や組織などの物理的化学的変化がきわめて少ない。また密閉装置内で低温下で取り扱われるため、微生物などによる汚染も少なく有利である。真空凍結乾燥は医薬品、微生物製品、食品などの製品について工業的に広く利用されており、日常的な話題としては質の高い保存・即席食品の製造法として着目されている。
[河村祐治]