日本大百科全書(ニッポニカ) 「知覧」の意味・わかりやすい解説
知覧
ちらん
鹿児島県薩摩半島(さつまはんとう)の南部、川辺郡(かわなべぐん)にあった旧町名(知覧町(ちょう))。現在は南九州市の中央部を占める。旧知覧町は1932年(昭和7)町制施行。2007年(平成19)川辺町と揖宿(いぶすき)郡頴娃(えい)町と合併、市制施行して南九州市となった。これにより川辺郡は消滅した。知覧の名は古代の倉院、知覧院に由来。旧町域は細長く、北東は鹿児島市、南西は枕崎(まくらざき)市と接し、海岸沿いにJR指宿(いぶすき)枕崎線と国道226号が通じる。藩政時代、佐多氏の私領として麓(ふもと)集落が整備された。御仮屋(おかりや)(政庁)を中心とした美しい庭園(国名勝)をもつ武家屋敷群は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。茶と畜産を中心とする農業が盛んで、とくに茶栽培の歴史は古く、知覧茶として名高い。県立茶業試験場がある。第二次世界大戦中は木佐貫原(きさぬきばる)台地に陸軍の飛行場が建設され、特攻隊の基地となった。1955年(昭和30)飛行場跡の一角に特攻平和観音堂が建立された。十五夜に行われるソラヨイは国重要無形民俗文化財、豊玉姫神社(とよたまひめじんじゃ)の六月灯(7月9日)に催される水車カラクリは選択無形民俗文化財である。
[平岡昭利]
『『知覧町郷土史』(1982・知覧町)』