石寨山古墓(読み)せきさいざんこぼ(その他表記)Shí zhài shān gǔ mù

改訂新版 世界大百科事典 「石寨山古墓」の意味・わかりやすい解説

石寨山古墓 (せきさいざんこぼ)
Shí zhài shān gǔ mù

中国,雲南省晋寧県城西方約5km,滇池(てんち)東岸に臨む石寨山東斜面に営まれた滇国墓地。墓は封土がなく,岩山をうがって土壙を掘るが,漆塗の棺槨をもつものもある。副葬品の内容の違いから4類型に分けられる。Ⅰ類墓は特有の土着形式と文様をもった銅鼓貯貝器(ちよばいき),葫蘆笙(ころしよう)と,戈,矛,剣,斧の青銅器多数を副葬するが,鉄器と漢式遺物をまったく含まず,前漢初期とされる。Ⅱ類墓はさらに青銅鋤・犂などの生産用具が増加し,鉄斧や金鞘付鉄剣などの鉄製品が加わる。草葉文鏡,昭明鏡,文帝期の半両銭などの漢式遺物から前漢代前半にあてられる。Ⅲ類墓はⅡ類墓遺物に,鐘,洗,耳杯,帯鉤,玉璧,五銖銭等の漢式遺物が加わる。とりわけ6号墓は規模が大きく,漆塗棺をもち,銅鼓,貯貝器,編鐘,多量の青銅武器,農具,玉類,重圏清治鏡とともに〈滇王之印〉蛇鈕金印を出土した。この金印は《史記》西南夷伝記載の,前漢武帝元封2年(前109),滇王が漢に下ったとき賜った印綬とみられる。これ以後,滇池一帯は益州郡として漢の郡県の一つとなった。Ⅳ類墓は中・小型墓が多く,銅器の数量は減少し,青銅鍍金円片飾や双耳台付缶,盒(ごう),壺の土器が副葬されていることから,前漢末より後漢にまたがる様相を示す。Ⅲ類墓までの大型墓はすべて銅鼓と貯貝器をもち,貯貝器上には滇国のさまざまな習俗が表されている。青銅武器の形態と文様も特色があり,これら民族色豊かな造形と文様は石寨山を中心に半径約40kmの間にひろがっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石寨山古墓」の意味・わかりやすい解説

石寨山古墓
せきさいざんこぼ

中国、雲南省晋寧(しんねい)県の西5キロメートルの石寨山に営まれた滇(てん)族の王と一族の墓地。1956~60年の調査で、滇池の東岸の小山丘上に50基の土壙(どこう)墓が出土した。墓は封土をもたず、長方形木棺に、多くは被葬者を仰身直肢葬にしたものである。副葬品には、銅鼓(どうこ)、貯貝器、銅製農具、銅製兵器、銅俑(よう)、動物飾り、人物飾りなど滇族の風俗を示すものと、半両銭、五銖銭(ごしゅせん)、鉄長剣、鉄斧(てっぷ)、銅鏡、帯鉤(たいこう)、銅容器、玉璧(ぎょくへき)などの漢式のものがあり、時代の下降とともに漢式文物が増加する。早・中・晩の3期に分けられ、前漢に併行するが、中期以後、漢式の文物が顕著になる。前漢の武帝は紀元前109年に滇王に金印を賜与している。中期の6号墓より出土した蛇鈕(だちゅう)「滇王之印」金印は、確証はないが、このこととの関連が考えられる。

[下條信行]

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