改訂新版 世界大百科事典 「石油需給適正化法」の意味・わかりやすい解説
石油需給適正化法 (せきゆじゅきゅうてきせいかほう)
1973年12月に,第1次石油危機による狂乱物価対策として,国民生活安定緊急措置法と同時に制定された法律。これらの2法に先立って,同年7月には〈生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律〉(いわゆる投機防止法)が制定されており,これら3法と物価統制令とを合わせて,現在の価格に関する統制4法が形成されている。石油需給適正化法は石油の適正な供給の確保と使用の節減の具体的措置を規定する。法の発動には,内閣総理大臣の告示が必要とされており(4条1項),恒久法でありながら限時法としての色彩を強く有している。
石油の供給確保の手段として,通産大臣による石油供給目標の決定・告示(5条1項),精製業者,輸入業者,特定石油販売業者に対する生産,輸入,販売計画の作成,届出の義務付け(6条1項),大臣によるこれらの計画の変更の指示およびこれらの業者の計画に沿った事業遂行の義務付け,指示の不遵守や計画に反した事業遂行がある時の大臣による公表(6条2~4項)といった手段が法定されている。またこのほかに,緊急,消防,災害復旧,医療等の国民の生命・財産・身体の保護ないしは公共の利益の確保のために不可欠の活動に必要な石油を確保するための手段として,大臣による特定石油販売業者に対する一定量の石油の保有・売渡しの指示,指示に従わない事業者の公表,売渡し命令(10条1~4項)が定められ,大臣による石油販売業者に対する石油供給のあっせん指導(11条)が定められている。石油の使用節減の手段としては,一定量以上の使用の禁止,違反の公表(7条1項,4項),通産大臣によるガソリンスタンドの営業時間・供給量等の規制(9条)が定められている。
このような諸手段でも石油の適正な供給の確保ができないという事態に備えて,法は,前期の諸措置による事態の克服が著しく困難な場合に,政令によって,石油の割当て,配給,製造・使用・譲渡等の制限,禁止に関する事項を定めうるとの委任規定を置く(12条)。緊急事態には強権的な配給制度による需給調整をなすことも想定されているのである。
執筆者:来生 新
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報