日本大百科全書(ニッポニカ) 「砂利採取業」の意味・わかりやすい解説
砂利採取業
じゃりさいしゅぎょう
採石業の一分野で、砂利(河川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利)を採取し、粒度などをそろえて需要者側に供給する産業。明治中期ごろから、コンクリートの骨材、鉄道の道床、道路構築・舗装材として砂利が利用されるようになり、砂利採取業が産業として成り立つようになった。関東大震災後、さらには第二次世界大戦後、コンクリートが多量に使用されるようになり、とくに経済の高度成長とモータリゼーションに伴う道路舗装の拡充、高速道路網や新幹線の延長、コンクリート建造物の普及、土木・建築用コンクリート製品の増加が骨材としての砂利需要を急増させた。
砂利は一般に安価なものであり、値段のほとんどが輸送費によって占められる。そのため、需要現場に近い河川に堆積(たいせき)している河川砂利がもっとも入手しやすい供給源であり、事実、1960年代前半までは河川砂利の利用が大半(1966年の河川砂利採取量は1億9700万トンで砂利全体の73.8%)を占めていた。すでに1956年(昭和31)、河川の保全と中小業者の多い砂利採取業者の育成を目的に「砂利採取法」が制定されていたが、砂利の需要増に伴う乱掘が河床・河川敷を荒らし、堤防に悪影響を与える事態が各所に出現したため、68年これが全面改正され、自然破壊防止の観点から河川砂利の採取が制限された。このため砂利供給源の多様化が図られ、79年には山砂利と陸砂利がそれぞれ河川砂利の採取量を凌駕(りょうが)した。こうしたなかで砂利運搬用の大型ダンプカーの過積みが社会問題となり、また、海砂利に含まれる塩分が十分に洗浄されないことから生ずるコンクリートの構造鉄材の腐食問題が各地で発生している。
ちなみに1983年(昭和58)の生産量が、河川砂利6900万トンで21%、山砂利28%、陸砂利29%、海砂利22%(合計3億2700万トン)であったものが、砂利生産量は頭打ちのまま、95年(平成7)現在、河川砂利は3800万トンで10.9%、山砂利27.6%、陸砂利37.6%、海砂利23.9%(合計3億4800万トン)で、河川砂利の減少(枯渇化傾向)を陸砂利が補っている形になっている。陸砂利は31.6%が北海道に、山砂利は41.6%が千葉県に集中しており、両者とも泥分の十分な洗浄が不可欠で、洗浄汚濁水の河川や農地への流入災害防止が課題である。海砂利は長崎、福岡、香川、岡山、愛媛県で66%を占め、塩分の洗浄に特別の注意が要求されている。90年から5年間の砂利採取災害件数の3割強を汚濁水・土砂流出が占めたが、最近では各県関係業者の責任体制が強化され、減少傾向にある。
なお、骨材需給に占める砂利・岩石砕石の割合が逆転するのは1981年からであり、95年には、骨材全体8億4900万トン(鉄鋼スラグ・人工軽量骨材=0.16%を含む)に占める砂利の割合は40.98%まで低下している。とはいえ、砂利は、鉄鋼、セメント、木材、非鉄金属等と並んで、わが国の産業・経済の基礎物質であり、建設資材の中心としての砂利の重要性は依然として大きい。現行方式より進んだ砕砂技術の開発を含む、業界全体の近代化が推進されなければならない。
[殿村晋一]