河川敷地ともいう。河川法では,堤防敷,高水敷,低水敷を河川区域と定めているが,河川敷はこのうちの高水敷,低水敷に対する総称である。低水敷は常時水が流れている部分をいい,高水敷は洪水時に冠水する部分をいう。
河川敷は,河川の流路を形成し,洪水時にはこれを安全に流過させるための土地であり,本来,公有地であるべきである。しかし,明治時代以来の河川改修において,財政上の理由から河川敷の土地のすべてを買収することはできず,河川敷内に民有地が残されている河川が少なからず存在する。たとえば,信濃川水系では,建設省の直轄管理区間における河川敷の総面積は約5960haであるが,そのうち民有地は約2790haとなっている(1996現在)。こうした民有地は,水田,畑,果樹園などに利用されており,極端な場合は家屋さえ建てられている。また,公有地化された土地であっても,通常,流水のない高水敷は,その土壌の肥沃さから水田,畑,果樹園などに利用され,都市近郊ではゴルフ場,運動場に利用されてきた。こうした公有地の利用地は占用地と呼ばれ,河川管理者の許可を必要とし,占用料が課せられる。この占用許可の条件は,その利用が治水・利水上支障とならないこと,公共性が高く,営利を目的としないことなどが原則とされている。しかし,営利を目的とする場合でも過去のいきさつから許可を認めざるを得ない現状にある。なお,1960年代後半から,都市公園法および同法施行令に定められている公園,緑地を確保できない都市において,その用地を河川敷に求める場合が多くなってきており,それに呼応して公園,緑地,広場,運動場,自転車道などを造成する河川環境整備事業が促進されている。しかし,河川敷内の自然の植生,鳥獣類の保護,あるいは景観上の観点から,これらの動きに反対する声もある。
→河原
執筆者:大熊 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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