鉛の硫酸塩で,鉛の酸化数ⅡとⅣの化合物が知られている。
化学式PbSO4。天然には硫酸鉛鉱として産する。鉛(Ⅱ)化合物の水溶液に硫酸または硫酸アルカリ,硫酸アンモニウムなどを加えると白色粉末状の沈殿として得られる。ゆがんだ岩塩型構造をもつ斜方晶系に属する結晶。単斜晶系のものもある。融点は1100~1200℃で,1000℃付近から徐々に分解する。密度は6.2g/cm3。水には難溶で,0℃で2.8×10⁻3g/100gH2O程度の溶解度を示す。強酸には溶け,酢酸塩,酒石酸塩,クエン酸塩などの水溶液などには錯体を形成して溶ける。過剰の水酸化ナトリウムには亜鉛酸(あなまりさん)イオンとなって溶ける。濃塩酸と加熱すると[PbCl3]⁻となって溶ける。還元剤とともに加熱すると鉛となる。
化学式Pb(SO4)2。鉛を陽極とし,約80%程度の濃硫酸を電解液として30℃以下に冷却しながら電解して得られる。黄色の粉末状結晶で,水溶液中では加水分解して酸化鉛(Ⅳ)になりやすい。加水分解の中間生成物として白色のPb(OH)2SO4を生ずる。冷濃塩酸に溶けて黄色溶液となる。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鉛の硫酸塩。酸化数ⅡとⅣの塩が知られる。
(1)硫酸鉛(Ⅱ) 化学式PbSO4、式量303.3。硫酸鉛鉱として産出。鉛(Ⅱ)塩の水溶液に可溶性の硫酸塩水溶液を加えて得られる。水に難溶、エタノール(エチルアルコール)に不溶、濃硫酸にわずかに溶ける。水酸化アルカリに溶け、アルカリ性が強いと酸化鉛(Ⅱ)になる。アンモニウム塩水溶液に溶ける。硫酸水素鉛(Ⅱ)一水和物Pb(HSO4)2・H2Oは硫酸中で鉛の電極を用いて電解し、陽極液を濃縮して得られる。
(2)硫酸鉛(Ⅳ) 化学式Pb(SO4)2、式量399.3。酢酸鉛(Ⅳ)に濃硫酸を作用させるか、鉛電極を用いて硫酸浴中で注意して電気分解する。黄色の結晶性粉末。乾いた空気中で安定であるが、水分により分解して酸化鉛(Ⅳ)PbO2となる。
塩基性塩の一つとしての塩基性硫酸鉛3PbO・PbSO4・H2Oは酸化鉛(Ⅱ)PbOを酢酸少量と硫酸で処理し、水酸化ナトリウムで微アルカリ性にして沈殿させて得る。白色の微粉末。ポリ塩化ビニル樹脂の安定化剤として用いられる。
[守永健一・中原勝儼]
硫酸鉛
硫酸鉛(Ⅱ)
PbSO4
式量 303.3
融点 1070~1084℃
沸点 ―
比重 6.1~6.4
結晶系 斜方
溶解度 40mg/L(水15℃)
【Ⅰ】硫酸鉛(Ⅱ):PbSO4(303.26).天然には硫酸鉛鉱として産出する.鉛塩水溶液に希硫酸または硫酸塩を加えると得られる.白色の斜方晶系粉末.ひずんだ岩塩型構造.融点1070~1084 ℃.密度6.2 g cm-3.水に難溶.濃硫酸にはほとんど溶けないが,過剰の酢酸アンモニウム,酒石酸アンモニウム,クエン酸アンモニウムのアンモニア水溶液には錯塩をつくって溶ける.過剰のアルカリには亜鉛酸塩,熱濃塩酸には [PbCl3]- となって溶ける.鉛蓄電池の放電の際に鉛電極上に生成する.蓄電池製造,ペイント用顔料,ニスの製造に用いられる.[CAS 7446-14-2]【Ⅱ】硫酸塩(Ⅳ):Pb(SO4)2(399.33).鉛を陽極に,濃硫酸を電解液として30 ℃ 以下で電解すると得られる.黄色の粉状結晶.[CAS 15739-80-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…眼科の点眼薬や耳鼻科でアフタなどの治療に使われる。酸化亜鉛は軟膏用に,硫酸鉛は農薬用殺菌剤として使われる。また固型セッケンに添加して殺菌効果をもたせるための薬剤として,ヘクサクロロフェン(G‐11)やテトラメチルチウラムジスルフィドあるいはビチオノールなどがある。…
※「硫酸鉛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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