赤外線検出器(読み)せきがいせんけんしゅつき(その他表記)infrared detector

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赤外線検出器」の意味・わかりやすい解説

赤外線検出器
せきがいせんけんしゅつき
infrared detector

赤外線,すなわち 0.78μm 以上の波長電磁波を検出して電気信号に変換する素子。動作原理によって熱検出器と量子検出器とに大別される。 (1) 熱検出器 赤外線を金黒あるいは白金黒などを塗布した面に吸収させ,その温度上昇を熱起電力 (利用例:熱電対サーモパイル ) ,電気抵抗の温度変化 (ボロメータ) ,焦電効果 (焦電型検出器) ,気体膨張による体積増加 (ゴーレイセル) などの現象を利用して電気信号に変換している。これらは感度に波長依存性がないのが特色で,可視~紫外域にも感度を有する。多くが室温で使用される。 (2) 量子検出器 赤外線が光子として吸収され,固体内で電子が高いエネルギー状態に励起されることによって起る光電効果を利用している。光電子放出 (光電子増倍管,イメージコンバータ) ,光起電力効果 (→フォトダイオード ) ,光伝導効果 (光伝導型検出器あるいは光導電型検出器ともいう) ,光電気磁気効果 (PEM型検出器 photo electro magnetic detector) などが利用されている。光電子放出を応用したものを除いて他は半導体検出器である。量子検出器は,光電子放出材料の仕事関数半導体エネルギー間隙に相当する波長から短波長側に感度を示す。長波長の赤外線検出にはエネルギー間隙 (エネルギーギャップ ) の狭い半導体あるいは半導体中の不純物準位を利用するので,低温に冷却して用いることが必要である。

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改訂新版 世界大百科事典 「赤外線検出器」の意味・わかりやすい解説

赤外線検出器 (せきがいせんけんしゅつき)
infrared detector

光検出器のうち,780nm~1mmの波長領域に感度をもつ光電検出器をいう。光子エネルギーが小さいため,禁制帯エネルギーギャップ,あるいは不純物イオン化ポテンシャルの小さな半導体を用いた内部光電効果型検出器や,各種の熱効果型検出器が用いられる。前者は高感度であるうえ時間応答性の優れたものが多く,40~50μm以下の波長域で広く実用されるが,液体窒素や液体ヘリウム温度に保った冷却型が主流を占める。後者は感度は劣るが常温動作が可能であるうえ,広い波長域にわたって波長選択性がない(分光感度特性がある波長範囲内でほぼ平たん)という特徴がある。波長200μm以上の遠赤外からミリ波の領域では,液体ヘリウム温度で働く炭素C,ゲルマニウムGe,ケイ素Siなどを素子としたボロメーター,n型インジウムアンチモンInSbのホットエレクトロン効果を利用した自由電子光導電セル(ボロメーターの一種と考えてよい),ジョセフソン検出器などが高感度検出器として採用される。
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世界大百科事典(旧版)内の赤外線検出器の言及

【赤外線】より

…可視光の長波長端(波長ほぼ700nm)から電波の短波長端(波長ほぼ1mm)の間の電磁波の総称。光のスペクトルでいうと赤色の部分の外側にあたるのでこの名がある。1800年にイギリスのF.W.ハーシェルが,太陽スペクトルの赤色部分より長波長側に熱効果の大きい部分があることを発見したのが最初である。波長数μm以下を近赤外,波長25μm以上を遠赤外,その間を中間赤外と呼び,また,波長25μm,30μmまたは50μmを境として,それ以上を遠赤外線,以下を近赤外線と総称することもある。…

※「赤外線検出器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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