鉛の酢酸塩。酢酸鉛(Ⅱ)と酢酸鉛(Ⅳ)とがある。
化学式Pb(CH3COO)2。無水和物,3水和物,10水和物があり,市販品は3水和物で,鉛糖とも呼ばれる。酸化鉛(Ⅱ)を温希酢酸に溶かしてから冷却すると3水和物が得られ,これをおだやかに熱すると無水和物が得られる。無水和物,3水和物ともに無色の結晶または粉末で,やや酢酸臭がある。無水和物は融点204℃,3水和物は75℃で無水和物に変わる。水,エチレングリコールによく溶け,アルコールにもわずかに溶ける。加水分解しやすく,いろいろな組成の塩基性酢酸鉛を生ずる。空気中からCO2を吸収しやすいので密封して保存する。渋い甘味をもち,有毒。食器類への顔料,塗料としての使用は避ける。また塵埃(じんあい)などとして吸入しないよう,マスクを用いるといった注意が必要である。各種鉛塩の製造原料,染色用に用いられるほか,重合触媒,医薬(収れん剤)などにも用いられる。医薬に用いる場合は,急性鉛中毒を起こすおそれがあるので,長期使用はできない。
四酢酸鉛ともいう。化学式Pb(CH3COO)4。四酸化三鉛Pb3O4を温氷酢酸に溶かして冷却すると無水和物の結晶が得られる。融点175℃の無色の結晶。水やエチルアルコールでは分解する。クロロホルム,熱酢酸に溶ける。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
酢酸と鉛がつくる塩。酢酸鉛(Ⅱ)と酢酸鉛(Ⅳ)がある。一般に市販されているものは酢酸鉛(Ⅱ)三水和物で、甘味があるので鉛糖とよばれることがあり、昔は甘味料としてワインなどに用いられていたといわれているが、非常に有毒である。
酢酸鉛(Ⅱ)は酸化鉛(Ⅱ)を温希酢酸に溶かして冷却すると析出する。有毒なので取り扱うときは粉末を吸わないように防塵(ぼうじん)マスクを使用し、十分注意する必要がある。各種鉛塩の製造に用いられるほか、収斂(しゅうれん)剤として湿布に使用される。
酢酸鉛(Ⅳ)(CH3COO)4Pbは四酢酸鉛ともよばれ、分子量443.4、融点175℃、比重2.228。四酸化三鉛Pb3O4を少量の無水酢酸と反応させることによって合成する。ベンゼン、クロロホルムに溶けるが、水に触れると分解して酸化鉛(Ⅳ)となる。有機合成反応で選択的酸化剤として重要で1,2-ジオールの炭素‐炭素結合(C-C)の切断などに用いられる。
[佐藤武雄・廣田 穰]
酢酸鉛
酢酸鉛(Ⅱ)三水和物
(CH3COO)2Pb・3H2O
分子式 C4H6O4Pb・3H2O
分子量 379.3
融点 204℃
沸点 (分解)
比重 2.25
酢酸鉛(Ⅱ),(Ⅳ)がある.単に酢酸鉛というときはPb(CH3COO)2・3H2O(鉛糖)をいう.【Ⅰ】酢酸鉛(Ⅱ):Pb(CH3COO)2(325.29).酸化鉛(Ⅱ)に温希酢酸を加えて溶かし,冷却すると三水和物が得られる.三水和物を75 ℃ で熱すると無水物が得られる.無水物は白色の結晶.融点204 ℃.密度3.12 g cm-3.三水和物は無色の単斜晶系結晶.密度2.54 g cm-3.融点75 ℃.いずれも水,グリセリンなどに易溶.鉛塩の製造原料,鉛めっき,防水加工,ワニス製造,顔料製造,染髪剤,分析試薬,医薬品,染色用に用いられる.有毒.[CAS 301-04-2:Pb(CH3COO)2][CAS 6080-56-4:Pb(CH3COO)2・3H2O][CAS 1335-32-6:Pb(CH3COO)2・2PbO・2H2O]【Ⅱ】酢酸鉛(Ⅳ):Pb(CH3COO)4(443.38).四酢酸鉛ともいう.四酸化三鉛を氷酢酸に溶かし,冷却すると得られる.無色の単斜晶系の結晶.融点175 ℃.密度2.23 g cm-3.熱酢酸,クロロホルムに溶けるが,水には分解して酸化鉛(Ⅳ)となる.有機合成で強酸化剤として用いられる.[CAS 546-67-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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