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磁気記録 じききろく

大辞林 第三版の解説

じききろく【磁気記録】

磁性体の残留磁気の性質を利用した情報の記録。テープ-レコーダー・ VTR ・フロッピー-ディスク・磁気カードなど。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

デジタル大辞泉の解説

じき‐きろく【磁気記録】

コンピューターなどの記憶装置のうち、データを磁性体と外部磁場によって記録する方式のこと。残留磁化強弱によって記録するアナログ方式と、極性など二つの磁気状態によって記録するデジタル方式とがある。磁気記憶

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

磁気記録
じききろく
magnetic recording

磁性媒体に情報を記録する方法およびその応用。コンピュータ分野では磁気記憶の呼称が使われるが、技術的には磁気記録と同じものである。[吉川昭吉郎]

沿革

1888年アメリカのスミスOberlin Smith(1840―1926)が『ジ・エレクトリカル・ワールド』The Electrical World誌に鉄の鋼線(ピアノ線)を用いて磁気録音を可能とするアイデアを発表したが、製品化はなされなかった。1898年デンマークのV・パウルセンはスミスのアイデアをもとに鋼線を用いた磁気録音機を開発し、テレグラフォンTelegraphonの名称で製品化した。性能はよかったが、実用に堪える録音時間を得るには長い鋼線を使わなければならないため、鋼線とこれを巻き付けるリールが重くてかさばること、また鋼線が伸びることなどの欠点があり、製品としては成功しなかった。しかし、製品の開発過程で、直流バイアス法という重要な発明がなされた。これは音声信号に直流電流を重ねて録音するもので、磁性体の非直線特性に基づくひずみを減少させるとともに録音感度を向上させる画期的な発明であった。パウルセンのテレグラフォンは成功しなかったが、鋼線式の磁気録音機(ワイヤレコーダー)の研究と開発は続き、製品は第二次世界大戦後まで軍用・民生用に使われた。1928年ドイツのフロイマーFritz Pfleumer(1881―1945)は磁気録音テープを用いるテープレコーダーを考案し、1935年ドイツのAEG(アーエーゲー)社はこの発明を元に製品マグネトフォンMagnetophonを発表した。これが現在の磁気録音機の基礎になっている。初めのうち、テープは鋼線に比べて性能が劣っていたが、媒体としての価格ははるかに低く、テープの交換・保管も容易で好評を得た。テープの材料やこれに塗布する磁性粉は時代とともに進化し、性能の面でも実用性を増した。この時期の磁気録音分野での大きな発明に交流バイアス法がある。交流バイアス法は日本、アメリカ、ドイツなどで個別に研究されていたが、1938年(昭和13)永井健三(1901―1989)らによって特許出願がなされた。音声信号に100キロヘルツ程度の高周波電流を重ねて録音ヘッドに供給する方法で、それまでの直流バイアス法に比べて高音質が得られるようになった。1975年(昭和50)には、東北大学の岩崎俊一(1926― )が垂直磁気記録方式を発明した。垂直磁気記録は、磁気媒体上の磁化が記録媒体面に垂直方向に行われるもので、記録密度が高い特長をもつ。
 磁気記録は音声をアナログ信号として記録することから始まり、記録内容が画像に拡大されても初めはアナログ信号として記録する方法がとられた。その後デジタル技術の発達によって、音声や画像の信号をデジタル信号に変換して記録するデジタル記録が主流となった。デジタル方式では、音声や画像などのほか、各種の情報が記録できるため、磁気記録の応用範囲は大きく拡大され、現在に至っている。[吉川昭吉郎]

技術


磁気記録媒体
記録装置を構成するおもな要素は磁気記録媒体と磁気ヘッドである。磁気記録媒体には磁気テープ、磁気ドラム、磁気ディスク、磁気シート・磁気カードなどさまざまな形態のものがある。
 磁気テープは、ポリエステルなどのプラスチックでつくられたベース(基材)の表面に酸化鉄、二酸化クロムCrO2、純鉄などの微粉を塗布または蒸着でつけたもので、磁気ヘッドに接触させながら走行させ、記録と再生を行う。録音・録画の分野で広く使われるほか、かつては大型コンピュータのメモリーにも使われた。
 磁気ドラムは、ドラム状の本体表面に磁性体の微粉をつけたもので、磁気ヘッドに接触させながら回転させて記録と再生を行う。大容量のメモリーとして、1950年代から1960年代の大型コンピュータの記憶装置に使われた。
 磁気ディスクは円板に磁性体の微粉を塗布したもので、磁気ヘッドに接触させながら、またはわずかにヘッドを浮かせながら回転させて、記録と再生を行う。柔軟なディスクを紙のケースに収め、コンピュータに挿入したり取り外したりすることが可能なディスクとして、フロッピーディスク、ZIP(ジップ)、Bernoulli(ベルヌーイ)ディスクなどがある。また、固いディスクを用い、コンピュータ装置の一部として搭載されて、取り外しはしないハードディスクがある。主としてコンピュータのメモリーに使う。フロッピーディスク、ZIP、Bernoulliディスクは現在ほとんどその使命を終え、磁気ディスクはハードディスクが主体である。
 磁気シート・磁気カードはシートやカード状の紙やプラスチックに磁性体を塗布したり練り込んだりしたもので、記録面を読み取り装置にアクセスすることで、あらかじめ記録された内容の認証が行われる。乗車券、テレホンカード、クレジットカード、プリペイドカードなどに利用される。[吉川昭吉郎]
磁気ヘッド
磁気記録媒体への信号書き込み、再生、消去などを行う装置である。磁気テープの場合を例にとると、磁気ヘッドは軟磁性体の本体にコイルが巻かれ、テープと接触する部分にギャップ(間隔)が設けられている。記録用ヘッドのコイルに音声信号電流を流すと、ギャップ部分につくられる強い磁界によって走行するテープが次々に磁化されて、残留磁化(残留磁気ともいう)の形で記録が行われる。再生の場合は再生ヘッドを接触させながらテープを走行させることにより、コイルに、テープに残留磁化の形で記録された信号に相似の誘導電圧が発生して、電気出力として取り出される。一つのヘッドで記録と再生とを兼用させることもある。消去ヘッドはギャップに強い直流または交流の磁界を発生させて、テープに残された残留磁化を消し去るものである。録音の場合、すでに記録されている信号を消去しながら録音するため、録音ヘッドより前の部分に設けられる。磁気ディスクの場合も原理は同様である。[吉川昭吉郎]
アナログ記録
アナログ記録は、音声信号やビデオ信号をそのまま電気信号に変えて記録ヘッドに供給し、記録媒体上に信号の変化状態に相似した残留磁化が残る様式の記録法である。パウルセンの発明から長い間磁気記録の主流であった。装置は比較的簡易な構造であるが、記録の品質や信号対雑音比が媒体の特性に左右され、またコピーをとったときに劣化が避けられないなどの欠点がある。おもな例に、オーディオ用のオープンリール方式のテープレコーダー、コンパクトカセット、VHSビデオレコーダーなどがある。[吉川昭吉郎]
デジタル記録
情報をデジタル符号に変換して記録ヘッドに供給し、符号の形で記録する様式の記録法。符号は1と0の二値状態が連続したものであり、記録と再生においては、1か0かの状態が区別されさえすればよく、媒体の特性によって記録品質が左右されることはない。また、信号対雑音比は符号化ビット数で決まり、媒体の特性には左右されない、コピーを繰り返しても劣化はない、などの長所がある。おもな例に、DAT(デジタルオーディオテープレコーダー)、D-VHS、コンピュータの磁気テープメモリー、フロッピーディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)などがある。[吉川昭吉郎]
水平磁気記録
磁性媒体上の磁化が磁性膜に対して水平になるような方法で記録する方式。磁気録音用の磁気テープ、磁気ディスクなどに広く用いられている。[吉川昭吉郎]
垂直磁気記録
磁性媒体上の磁化が磁性記録媒体の面に対して垂直になるような方法で記録する方式。1975年岩崎俊一らによって提案された。水平磁気記録に比べて記録密度が高く、コンピュータ用のハードディスクなどに使われている。[吉川昭吉郎]
光磁気記録
磁気記録であるがやや変わり種で、記録および再生に光を使うものである。常温では磁化されず、高温で磁化される性質をもった磁性粉を磁性媒体として塗布したディスクを用いる。表面に強いレーザー光を当てると、当たった箇所が熱せられて磁性が失われるが、すこし冷えたところで磁場をかけると磁性媒体は磁化されて記録(書き込み)が行われる。磁化された箇所にレーザー光を照射すると、磁気光学カー効果という効果で再生(読み出し)が行われる。磁気録音分野ではMD(ミニディスク)、コンピュータ分野ではMOがある。常温では磁化されない磁性媒体を用いているので磁石を近づけても記録が損なわれることがなく、ディスクは堅牢(けんろう)なケースに入れられているので、耐久性・信頼性に優れている。日本では一時期よく使われたが、安価で記録容量の大きいCD-R(追記型コンパクトディスク)や個体メモリーの登場によって、現在ではほとんど使われなくなった。[吉川昭吉郎]

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