日本大百科全書(ニッポニカ) 「カー効果」の意味・わかりやすい解説
カー効果
かーこうか
Kerr effect
電磁場と物質の相互作用の一種で、J・カーにより1875年に発見された現象。電気効果と磁気効果があるが、一般には電気効果をさす。物質の屈折率が電界の作用でその2乗に比例して変化する二次電気光学効果をいう。ちなみに、電界(電場)に比例する一次電気光学効果はポッケルス効果とよばれ、中心対称性をもたない結晶においてのみ現れる。普通の物質でも電界の中に置かれると、構成分子に電気的モーメントが誘起され、それに原因となった電界が作用して、誘電率つまり屈折率が電界の2乗に比例して変化する。これがカー効果である。光の進行方向に対し電界が垂直にかけられていると、物質の屈折率は、光の電気ベクトルが電界に平行な偏光成分と垂直な偏光成分とで異なり、複屈折を生ずる。この現象は非常に急速におこるので、それを利用して高速光シャッターをつくることができる。これをカー・セルという。ニトロベンゼン、二硫化炭素のような物質を入れたセルを、直交させた偏光子と検光子の間に置き、セルにはこれらの偏光方向に対し角度45度の方向に電界を加える。電界がなければ、光は直交した偏光子を通り抜けることができないが、電界が加わると、その時間だけセルの中で複屈折がおこるので、偏光子でつくられた直線偏光の光は楕円(だえん)偏光となり、そのある部分は検光子を通り抜けることができる。これが光シャッターの原理である。なお、直線偏光を強力な磁石の磁極で反射させたとき、楕円偏光に変わる現象を磁気的カー効果という。
[尾中龍猛・伊藤雅英]
『服部利明著『非線形光学入門』(2009・裳華房)』