記録媒体を垂直(膜厚)方向に磁化させてデータを記録させる高密度磁気記録方式。光磁気ディスク(MO)に採用されている。長手(ながて)磁気記録(水平磁気記録)方式のハードディスクでは記録密度が限界に近いので、垂直磁気記録方式のハードディスクも登場した。
磁気記録は並べた微細な棒状磁石の極性を変化させて情報を記録する方式であるが、現在の膜面方向に棒磁石を並べて磁化させる長手方式では記録密度を上げると隣接するビットによる減磁界の影響が大きく、ビット当りの体積が小さくなりすぎて熱的な影響を受けやすい。これに対して、棒磁石を縦に並べる垂直磁気記録方式では棒磁石の長さ(膜厚)を大きくとれるので体積は大きくでき、熱的な影響も受けにくく、書き込まれたお互いの情報間に生ずる減磁界の影響も小さくできる。さらには、外部からの浮遊磁界に対しても強くなるので、読み書きヘッドの性能にもよるが、長手方式の数倍以上の記録密度が可能とされる。
垂直磁気記録は東北大学教授の岩崎俊一(1926― 、現東北工業大学学長)が1975年(昭和50)に提案したものではあるが、磁気ディスク装置として実用化されたのは2004年(平成16)の暮れと比較的新しい。東芝が40ギガバイトの携帯音楽プレーヤー用に1.8インチ型ハードディスク装置を発表したのが最初で、翌年80ギガバイトのものの量産を開始する。2006年には、現行ハードディスクの平方インチ当り100ギガビットに比べ179ギガビットの記録密度を達成し、200ギガバイト2.5インチ型をノート型パソコン、カーナビゲーション用に商品化し、携帯電話用の0.85インチ型へ展開した。他に、2.5インチ型は日立GST(Hitachi Global Storage Technologies)と富士通が製品化を進めており、ディスクの供給は昭和電工、HOYAなどが開始している。一般的な3.5インチ型でも多くの製品が登場している。
記録密度を上げると、従来型の多結晶磁性連続膜では結晶粒のサイズや形の不ぞろいのため再生信号の雑音の原因となり、高密度化のために結晶粒を小さくすると「熱ゆらぎ」により磁化が不安定になり、時間とともに記録が失われる問題もある。対策として日立と東北大は人工的にそろえた磁性微粒子を規則的に配列するなどの技術を開発し、記録の高密度化が進んでいる。
[岩田倫典]
『日本材料科学会編『近代磁性材料』(1998・裳華房)』
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