日本大百科全書(ニッポニカ) 「神道用語集」の意味・わかりやすい解説
神道用語集
しんとうようごしゅう
*印は、別に本項目があることを示す。
赤心(あかきこころ)
神道でいう本来の心を表す語で、清く明るく、穢(けがれ)のない誠の心のこと。清明心(きよきあかきこころ)と同じ。
贖物(あがもの)*
罪、穢を祓(はら)い清めるとき、その代償として差し出す物品。神道では、罪は刑により、穢は祓(はらえ)によって消えると考え、木綿(ゆう)、麻(あさ)、御衣(おんぞ)など衣服の料や食物など古代生活の必須(ひっす)の品々を差し出した。現在の罰金にあたる。
荒振神(あらぶるかみ)*
凶暴、災いを起こすことをつかさどる神。素戔嗚尊(すさのおのみこと)の暴状により、狭蠅(さばえ)のごとく湧(わ)き起こった神、日本武尊(やまとたけるのみこと)が言向(ことむ)け、和(やわ)らげたという膽吹山(いぶきのやま)(伊吹山)の神、行路の人に烈(はげ)しい神威を示し災いを与える神のごときものである。また凶暴なる種族やその長を称することもある。
荒魂(あらみたま)*
神霊のうちで、外面に表れた荒々しい、活動的、戦闘的、積極的な状態の魂。和魂(にぎみたま)と対称に、神霊の2方面を示す。
氏子(うじこ)*
氏神に対する語。一般には、その氏神、鎮守(ちんじゅ)神、産土(うぶすな)神と歴史的にゆかりのある一定地域内に居住する住民をいい、地域社会の共同体的な祭祀(さいし)を維持する制度的基盤となっている。
産土神(うぶすなのかみ)
祖先、また自己の生まれた土地に祀(まつ)られている神。すなわち、その地域の住民や出身者とその地を守護する地域神を称したが、氏神や鎮守神と混用されている場合もある。
王子神(おうじがみ)*
童態で現れた神。神道に神は老人あるいは童子の姿をとって現れるという信仰もあり、日吉(ひえ)・祇園(ぎおん)の八王子権現(ごんげん)、熊野の若一(にゃくいち)王子権現・九十九(つくも)王子のごとく童子の形で現れる神のこと。
神楽(かぐら)*
神事芸能の一つ。神慮を慰めるため、神前で奏舞される楽舞で、宮中また伊勢(いせ)の神宮などで奏される御(み)神楽と、民間で行われる里(さと)神楽がある。
神棚(かみだな)*
屋内の清浄な場所に棚を設け、神札を奉斎した家庭祭祀の施設。家内安全と家業繁栄の守護を祈る信仰生活の根本とされている。
勧請(かんじょう)*
離れた土地にある本社(本宮)の祭神の分霊を、新たに社殿を設けて迎え祀ること。この鎮祭した神を勧請神という。
惟神の道(かんながらのみち)
神道の別名。随神道とも書き、神意のまま、すなわち、人の私心を加えない本来の道のことをいう。神代より続いてきた清く明るく直き正しき道に、いささかも手を加えることなく、そのままに従って行動する道を意味する。
宮中三殿(きょうちゅうさんでん)*
皇居、吹上御苑(ふきあげぎょえん)の南に鎮祭されている賢所(かしこどころ)、神殿(しんでん)、皇霊殿(こうれいでん)の三殿をいう。中央の賢所に天照大神(あまてらすおおみかみ)、東の神殿に皇霊産霊神(かみむすびのかみ)、高御産巣日神(たかみむすびのかみ)など8神および天神地祇(てんじんちぎ)、西の皇霊殿に歴代天皇の神霊を祀る。
鑽火(きりび)*
祭儀に用いるため、木をすり合わせてきり出した清浄な火。神道では、古くから、火を尊び、祭儀や神饌(しんせん)の調理には、とくに、新しく神聖な火をおこし用いることとしている。
幸魂(さきみたま)
身を守り、幸福になるように作用する神霊の一つの霊能。和魂(にぎみたま)に神霊の恵みの作用として現れたもので、奇魂(くしみたま)との複合によって神業を行う。
七五三参り(しちごさんまいり)
人生儀礼の一つとして行われる幼児の年祝い。11月15日、数え年3歳の男女、5歳の男児、7歳の女児が氏神や産土(うぶすな)神社などへ参拝し、無事な発育を感謝するとともに、社会人としての成長を祈願するもの。髪置(かみおき)、袴着(はかまぎ)、紐落(ひもおとし)(帯解(おびとき))の風習に由来するという。
社家(しゃけ)*
神社に世襲で奉仕する神職の家筋。当初神社に専従で奉仕していた者が、職業として世襲され社家となったもの。伊勢の神宮をはじめ有力神社にもあったが、明治初期に廃された。しかし現在いわゆる民社の大半にその制が残っている。
社僧(しゃそう)*
神仏習合時代、神社または神宮寺で神前読経(どきょう)や供養(くよう)などの仏事を行った僧侶(そうりょ)。最高位のものを別当といった。一時は神職をしのぐ力をもち神社を支配する場合もあったが、明治初期の神仏分離により、大半は還俗(げんぞく)せしめられ、その制は廃止された。
神階(しんかい)*
神に奉った位階。神位ともいう。品(ほん)位、位階、勲位があり、品位は四品以上四階、位階は正六位上一階、五位以上正一位まで一四階、勲位は一二等から一等まで一二階がある。
神使(しんし)
眷族(けんぞく)ともいう。神の意志を示すため、神に先だって現れる使者で、その神に縁故のある動物が多い。たとえば稲荷(いなり)の狐(きつね)、春日(かすが)の鹿(しか)、八幡(はちまん)の鳩(はと)、伊勢の鶏、日吉(ひえ)の猿、熊野の烏(からす)、松尾(まつのお)の亀(かめ)などが有名。
神饌(しんせん)*
神に供する飲食物。現在一般には、清浄で新鮮な和稲(にぎしね)、荒稲(あらしね)、酒、餅(もち)、海魚、川魚、野鳥、水鳥、海菜、菓、塩、水などを献(ささ)げる。特殊な神事に古式どおり特別に調理した神饌を用いる神社もある。
神体(しんたい)*
礼拝の対象となっている神霊の依(よ)り憑(つ)く神聖な物体。御霊代(みたましろ)ともいう。神体としては、鏡、剣、玉、石、影像などが多く、神秘として拝観対象とはしていない。
神明(しんめい)
神と同意義に用いられる場合と、天照大神の別名として用いられる場合の二つがある。各地にある天照大神を祀る神明宮は、後者の例であり、旧神宮神領であった地に祀られているのが大半である。
遷宮(せんぐう)*
神宮、神社の神座を遷(うつ)すこと。通常は神宮の場合に用い、一般の神社では遷座ということが多い。これを定期的に行うのが式年遷宮である。神座を動かすため、神社にとってはもっとも重大な祭儀となっている。
鎮守の神(ちんじゅのかみ)*
一定区域の土地または場所を鎮安守護する神。国や城あるいは神社、寺院内などに祀られた。後世そこに住む住民を守護する神として、氏神や産土神とほぼ同意義に用いられている。
直会(なおらい)*
祭儀ののち、撤下した神饌などを参列者がともに飲食する行事。本来は神とともに頂く意であったが、のち、祭儀のための忌みを解いて、平常の状態に直(なお)り復する意味とされてきている。
和魂(にぎみたま)
神霊のうちで、常の状態の静的、調和的、平和的な魂のこと。時と場合により、1神格中に統一されている和魂と活動的な荒魂が分離し、それぞれ別々の働きをする。これを別個に考え、和魂と荒魂をそれぞれ別に祀ることもある。
初穂(はつほ)
収穫にあたり、神に感謝し、まず稲穂の熟したのをとり献じたそれのこと。後世には、稲に限らず、神に供える雑穀、野菜から海産物に至るすべての収穫物を広くさした。なお新鋳の銭貨をも初穂と称して神に献じ、現在一般に神に供える金銭のことをも初穂料と称している。
初宮詣で(はつみやもうで)
お宮参りともいう。子供が生後はじめて氏神などへ参拝し、氏子として社会的承認を得る神事で、子供の健康な成長を祈願するもの。地方によって多少異なるが、一般には、男児が31日目、女児は33日目である。
神籬(ひもろぎ)*
神霊の依り憑く場所として、清浄な土地に常磐木(ときわぎ)を植えて囲み、神座としたもの。のちには、神の宿るところとして、室内や庭上における祭典で、祭壇上に榊(さかき)を立てたものを称した。
屋敷神(やしきがみ)*
家、屋敷を守護する神。屋敷地の土地神を祀ったもの、一族の氏神を屋敷に祀ったもの、一家の守護神として他から勧請したものとの別がある。
依代(よりしろ)*
神霊が降臨し依り憑く物。樹木や石などの自然物の場合と、幟(のぼり)、御幣、柱などの鋪設(ほせつ)物の場合とがある。また聖なる木の枝や御幣などの執物(とりもの)を持つ者もこれにあたる。
尸童(よりまし)*
神霊の依り憑く人。一般に童児の場合が多いが、成人した男女にも用いられる。現在でも、神幸の際、「ひとつもの」と称し、美しく化粧して着飾り、馬にまたがって行列の中心を行く童児がこれである。