禁河(読み)きんが

精選版 日本国語大辞典 「禁河」の意味・読み・例文・類語

きん‐が【禁河】

〘名〙 平安時代以降、その川で産する鮎(あゆ)などを天皇供御(くご)に供したり、朝廷遊猟にあてたりするため、一般人漁獲を禁じた川。
西宮記(969頃)八「禁河〈埴河、左衛門府撿知、葛野河、右衛門府撿知〉已上夏供鮎」

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デジタル大辞泉 「禁河」の意味・読み・例文・類語

きん‐が【禁河】

天皇の遊猟のためや、魚を天皇に供するために一般人の漁を禁止した川。とめかわ

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改訂新版 世界大百科事典 「禁河」の意味・わかりやすい解説

禁河 (きんが)

神饌や天皇の食饌に供する魚類の漁獲や遊猟のために,一般の漁獲を禁じた河川。供御江(くごえ)ともいい,同様のもので禁制の対象が海の場合は禁海という。日本古代の山野河海は〈公私共利〉の原則であったが,7世紀後半以降この原則を法的に確立していく際に,禁野とともに江河池沼の一部を囲い込み,他の民業を妨げない範囲で,贄(にえ)としての魚類を漁獲する禁河・禁海が設置された。689年(持統3)に河内国大鳥郡高脚海にならって設置された摂津国武庫海1000歩などはその早い例である。9世紀に入ると供御江の変更や新設が盛んに行われ,一部は御厨(みくりや)として編成されていったが,しだいに用水権や交通権の妨害などが禁制にもかかわらず増加し,排他的占有の傾向を強めていった。10世紀に入ると《西宮記》に皇室領禁河として夏にアユを貢ずる埴河(上桂川)・葛野(かどの)河(下桂川)の2所がみえ,左右衛門府が検校しているが,衛府は後に四衛府狩取として贄採取に活躍した。
禁野
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