爆撃機(読み)バクゲキキ(その他表記)bomber

翻訳|bomber

デジタル大辞泉 「爆撃機」の意味・読み・例文・類語

ばくげき‐き【爆撃機】

爆弾を搭載し、爆撃を行うための軍用機

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精選版 日本国語大辞典 「爆撃機」の意味・読み・例文・類語

ばくげき‐き【爆撃機】

  1. 〘 名詞 〙 爆弾などを載せ、敵を爆撃する目的で作られた飛行機。〔現代術語辞典(1931)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「爆撃機」の意味・わかりやすい解説

爆撃機 (ばくげきき)
bomber

爆撃を主目的とする軍用機で,主たる運用目的によって分類すれば,戦略爆撃機戦術爆撃機に大別される。1981年現在,世界の軍用機の総数は10万機以上あり,そのうち爆撃機と呼ばれるものは約2600機で,著しく少数である。これは近年,戦術爆撃という任務は,ほとんど戦闘爆撃機戦闘機が行うようになり,第1次世界大戦以来この任務を行っていた軽爆撃機(戦術爆撃機)の数がきわめて少なくなった結果である。本項ではこのうち,機数としては少ないが用兵上最も重要な戦略爆撃機に重点を置いて述べる。

航空機が初めて実戦で爆撃を行ったのは,1911年イタリア・トルコ戦争においてイタリア軍が北アフリカのトリポリを空襲した時のことであるが,この時はまだ爆撃機というはっきりした機種はなく,爆弾もごく小型のものであった。第1次世界大戦が勃発すると,軍用機は急速に発達し,これにともなって活発な機種の分化が行われた。そして開戦初期には偵察機で行っていた爆撃も,まもなく誕生した専門の爆撃機によって本格的に行われるようになり,終戦の18年には爆撃機の爆弾搭載量は1.5tを超えるまでになった。

 それから20年後の第2次世界大戦になると,軍用機の性能向上と機種の分化はさらに進み,爆撃機の系列に属する機種として重爆撃機(大型で多量の爆弾,燃料の搭載ができる爆撃機),軽爆撃機(中型か小型で搭載量は小さいが,軽快な運動のできる爆撃機),急降下爆撃機(比較的小型で,爆弾の命中率のよい急降下爆撃ができるよう,がんじょうな構造と,急降下速度ブレーキなどの必要な装置を備えた爆撃機),および攻撃機が目覚ましく活躍した。そして陸上における大型重爆撃機の戦略爆撃と,海上における攻撃機・爆撃機の雷撃,爆撃は,ともに戦局の帰趨を大きく左右するほどに強力なものとなった。

 第2次大戦末期にジェットエンジンが実用化され,核爆弾が発明されると,戦略爆撃の思想は〈高速大型機による長距離核攻撃〉に向けられ,時を置かず,戦略爆撃機のジェット化計画が始められた。そしてアメリカでは,1950年代には,早くも爆弾搭載量約9t,航続距離1万km以上,最高速度マッハ0.8以上というボーイングB47が就役し,さらに引き続きその後継機として,より大型,高性能のボーイングB52が開発装備され,戦略爆撃機の歴史に一時代を画することになった。また戦術攻撃用の軽爆撃機の領域においてもジェット化が進められ,各国とも新しくジェット軽爆撃機を開発し就役させた。

 しかし1960年代に入ると,大陸間弾道ミサイルICBM)は著しい発達を続け,ついに核戦略の主力兵器として爆撃機と肩を並べるに至り,相対的に,核輸送手段としての爆撃機の比重は大きく低下することになった。また,地対空ミサイルや警戒レーダーの進歩により防空体制の強化が著しく進んだ結果,爆撃機にとって,それまで安全地帯であった高空ももはや安全ではなくなり,従来の高高度高速侵入という戦法は,低高度高速侵入に切り替えざるをえなくなった。

 他方,搭載兵器の領域において,核弾頭搭載可能の空対地ミサイルが発達し,空中発射巡航ミサイルALCM)が出現したことは,爆撃機をして,相手の反撃の及ばない安全な地点から核攻撃を行うことを可能にさせるに至り,かくして戦略爆撃機の備えるべき性能ならびにその運用法には著しい変更が求められることになった。しかし,このような新時代の爆撃機を新たに開発装備するには莫大な費用を必要としたため,アメリカにおいては結局,費用対効果の見地からICBMを優先させ,爆撃機は在来機の改造で間に合わせることになった。また上述のように進歩した対空警戒防空網に対しては,もはや1950年代生れの軽爆撃機の運動性や攻撃力では対抗できなくなり,軽爆撃機は逐次その任務を新しい戦闘爆撃機や戦闘機に明け渡していった。そして,アメリカ軍における軽爆撃機という機種は,ベトナム戦争さなかにその姿を消してしまった。

 1970年代に入ると,60年代より絶えることなく続いた電子技術と航空技術の全般にわたる目覚ましい発展は,高性能ALCM開発の進展と相まって,足踏み状態にあった新戦略爆撃機開発に新たな技術的可能性を加えた。また一方,60年代以来優先的に進められていたICBM開発装備の流れは,米ソ両大国間における核ミサイル戦力に一応のバランスをもたらしたので,今度は,発進後の目標変更や引返しなど,ICBMにはまねのできない能力をもつ有人爆撃機が再び重視されるようになり,その開発装備の費用支出もより容易な環境となった。その結果,地形追随低空高速侵入やALCM精密核攻撃などの高度な性能をもつ新有人戦略爆撃機開発の機運が熟し,ロックウェルB1(アメリカ),ツポレフTu26バックファイア(ソ連)などの開発が進められることになった。

 1980年代半ばに,全備重量100t以上の大型爆撃機は世界に400機ほどあり,そのほとんどは米ソ両大国に属していた。アメリカ軍のこの時期の主力戦略爆撃機はB52で,原型は1950年代の開発になるものであるが,用兵思想の変遷に応じて数度の近代化改修を重ね別機のようになっているが,1986年から後継機B1Bが就役して,主力機となった。ソ連の主力戦略爆撃機Tu26は全備重量約120tでB1Bより小さいが,飛行性能はほぼ同程度と見られている。その後,ロシアおよびCIS独立国家共同体)ではTu-160ブラックジャック)を開発したが,これはB1Bより大型高速である。
ミサイル
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「爆撃機」の意味・わかりやすい解説

爆撃機
ばくげきき
bomber

爆弾を積んで敵を爆撃するための軍用機。

開発

空からの爆撃は、1911年イタリア軍の飛行機がトルコ軍に対し重さ2キログラムの手榴(しゅりゅう)弾4個を投下したのが最初とされているが、第一次世界大戦が始まると本格的な爆撃機の開発が行われ、戦場で攻撃にあたる軽爆撃機とともに、長距離作戦用の大型爆撃機も生み出された。当時の軽爆撃機は爆弾の搭載量が100~200キログラムにすぎず、大型爆撃機でも0.5~1トン程度で、威力はたいしたことがなかった。だが、ドイツがツェッペリン飛行船と大型爆撃機によりイギリスを空襲し、士気の崩壊をねらったことは注目に値する。計113回の空襲による死者は1415人と記録されており、その爆撃効果はごく小さかったが、これが戦略爆撃の始まりであった。その後、爆撃機は戦闘機と並ぶ空軍の主力機種として開発に力が入れられ、第二次世界大戦時には戦争の流れを決する戦力にまで成長した。

[藤田勝啓]

第二次世界大戦時

そのころの爆撃機は国によって呼び方や用途が多少異なるが、一般的にみれば戦略爆撃用の四発重爆撃機、戦術爆撃を行う双発の中型爆撃機、地上部隊支援用の単発軽爆撃機に分けることができ、軽爆撃機より軽快な攻撃機や戦闘爆撃機も対地攻撃に用いられた。こうした爆撃兵力が地上戦闘に与えた影響は大きいが、戦略爆撃のほうも第一次世界大戦とは比較にならないほどの規模に達した。第二次世界大戦中にイギリスとアメリカの爆撃機と戦闘機がヨーロッパ戦線で投下した爆弾量は約270万トンにも達するが、その半分近くがドイツ本国に対する戦略爆撃にあてられたのである。それには都市に対する無差別爆撃も含まれたので、爆撃による死者は約30万人に達した。

 一方、日本に対するB-29の空襲は、約16万トンの爆弾と2発の原爆により、30万人以上の死者(うち原爆だけで10万人以上)と戦争遂行力の枯渇をもたらし、日本を降伏に追い詰めた。

[藤田勝啓]

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後、核爆弾により強大な破壊力を身につけた長距離爆撃機は、戦略核攻撃力の中心としてきわめて大きな位置を占めるようになった。その後、核弾頭をつけた大陸間弾道ミサイル、ついで潜水艦発射弾道ミサイルが実用化されると、相対的に戦略爆撃機の意義は薄れたが、それでも米ソ両国は戦略核攻撃力の一部として戦略爆撃機を維持し続けた。アメリカが戦略爆撃機部隊を保持する理由として主張したのは、爆撃機はミサイルより破壊力が大きく、また目標の選択、出撃後の攻撃中止、通常戦闘への投入などの点で運用に柔軟性があり、そしてソ連に防空のための大きな出費を強いることができる点であった。1950年代なかばからアメリカ戦略爆撃機の主力となっているB-52は、空中給油を受けることによって世界のいかなる場所でも攻撃でき、爆発威力20キロトンのミサイルを最大20発、あるいはミサイル6~8発と核爆弾(15~20メガトン級のものから威力調整可能式のものまで何種かある)4発を積めるから、確かに攻撃力は大きい。またベトナム戦争に出動したことで実証されているように、通常爆撃にも最大22トンという爆弾搭載能力を生かして威力を発揮する。

 その反面、爆撃機は弾道ミサイルによる奇襲攻撃を受けて地上で破壊される危険性があり、そして最大の問題として、相手の防空網を突破しうるかという点が問われた。そこでアメリカでは、B-52に長射程の巡航ミサイルを搭載して遠距離攻撃能力をもたせる一方、レーダーに発見されにくい超低空を高速で飛べる可変翼爆撃機B-1を配備し、さらにレーダーに探知されにくいステルス爆撃機B-2も開発した。

 冷戦が終結したあと、軍事バランスにおける戦略核攻撃力の比重が減少し、アメリカおよびロシアが保有する爆撃機の数はかなり少なくなったが、それでも爆撃機を使い続けているのは、通常兵器による攻撃にも大きな威力を備えるからである。アメリカが可変翼爆撃機B-1を通常爆撃専用に変更(核兵器専用の投下装置は除去)したりしているのは、戦略兵器の総数を減らしていくという米ロの合意にあわせるという意義もあるが、小型な戦闘機や攻撃機よりずっと大きな兵器搭載量と航続力を備える爆撃機を、通常戦闘に活用するという意思の表れといえよう。B-52とB-2は通常戦闘にも使われるが、核兵器の運用能力を保持しており、かつてアメリカに対抗して多数の長距離爆撃機を保持していたロシア(旧ソ連)でも、機数はずっと少なくなっているが、B-52クラスのツポレフTu-95と、B-1より一回り大型なTu-160を、核攻撃と通常攻撃を兼ねる爆撃機として使っている。

 このように大型長距離爆撃機は今後も使われ続ける形勢にあるが、それより小型な戦術爆撃機とよばれたクラスの爆撃機は、ジェット時代に入って戦闘爆撃機や攻撃機の能力が大きく向上したため、影が薄くなり、西側諸国では姿を消したが、ロシアでは中程度の航続力をもつ爆撃機はそれなりの価値があると考え(海軍航空部隊にも配属し、艦船の攻撃を主任務とさせている)、Tu-22Mを使い続けている。

[藤田勝啓]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「爆撃機」の意味・わかりやすい解説

爆撃機
ばくげきき
bomber

空中から地上ないし海上の目標を爆弾投下によって攻撃するのを主任務とする軍用機。第1次世界大戦中に出現し,1915年ツェッペリン飛行船によるロンドン空襲を契機に,爆撃機による戦略爆撃が行なわれるようになり,第2次世界大戦では戦略 (対都市) および戦術 (対軍事目標) 攻撃の主力的な存在となった。戦略爆撃には重爆撃機,中型爆撃機が使用され,戦術用には主として軽爆撃機 (急降下爆撃機) ,戦闘爆撃機が使われた。海上では航空母艦用に艦上爆撃機 (急降下爆撃機,索敵爆撃機) および雷爆撃機 (攻撃機) ,陸上基地用として陸上攻撃機 (水平爆撃または雷撃) および陸上爆撃機 (急降下爆撃,雷撃,あるいは反跳爆撃) などが使用された。大戦末期に出現した原子爆弾は,爆撃機の戦略的価値を決定的にした。さらに爆撃機のジェット化および熱核兵器 (水素爆弾) と戦術核兵器 (小型原子爆弾) の出現により,重爆撃機から戦闘爆撃機まであらゆる爆撃機が,局地的通常戦争から全面核戦争にいたるすべての戦争場面での主戦兵力となった。一方,1950年代末からの攻撃および防御における各種ミサイルの進歩は,爆撃機の独占的地位を併存的地位にまで引き下げた。しかし爆撃機もまたミサイルまたは誘導爆弾の採用および有人であるための戦術的柔軟性によって,戦略と戦術の両面で十分な有用性を保っている。

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百科事典マイペディア 「爆撃機」の意味・わかりやすい解説

爆撃機【ばくげきき】

爆撃を主目的とする軍用機。第2次大戦まで軽爆撃機と重爆撃機に分けたが,今日では,前者は戦闘機から進化した,地上支援,迎撃,爆撃などのできる攻撃機にかわり,後者は大航続力の戦略爆撃機となった。しかし防空組織とミサイルの進歩で戦略爆撃機も逐次減少しつつある。最新式の代表的なものは,米国のB1B戦略爆撃機,旧ソ連のブラックジャックなどである。なお,米国はB52の後継機として,B-2を開発した。このB-2は,レーダー波をほとんど反射しないため,ステルス(見えない爆撃機)と呼ばれる。
→関連項目軍用機

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世界大百科事典(旧版)内の爆撃機の言及

【攻撃機】より

…現在西側唯一の実用VTOL機ハリアーの攻撃機型がイギリス・アメリカ両軍で使用されている。 なお,第2次大戦当時の旧日本軍機でこれに相当するものとして,海軍機には〈攻撃機〉(水平爆撃と魚雷攻撃を主とする機種)と〈爆撃機〉(急降下爆撃を主とする機種)があり,陸軍機には〈襲撃機〉(対戦車攻撃など近接地上支援を主とする機種)と,小型で運動性のよい〈軽爆撃機〉があった。【氏家 悌夫】。…

※「爆撃機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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