精選版 日本国語大辞典 「戦闘機」の意味・読み・例文・類語
せんとう‐き【戦闘機】
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敵の航空機と空中で戦い、撃墜するのを目的とする軍用機。第二次世界大戦以降は対地攻撃任務を兼ねるものが多くなり、対地攻撃を主として、空戦能力は敵戦闘機に襲われたときに自らを守る程度にとどめた戦闘機もある。
[藤田勝啓]
現代の戦闘機を用途と性格によって大別すると、迎撃機、制空戦闘機、戦闘爆撃機の三つになる。迎撃機(防空戦闘機ともいい、航空自衛隊は昔の邀撃(ようげき)機という呼び方に音をあわせ要撃機とよんでいる)は、来襲する敵機(主として爆撃機)を迎え撃つための戦闘機で、速度、上昇力を重視し、レーダーと空対空ミサイルにより全天候戦闘能力を備えたものが多い。戦域の制空権確保を目ざす制空戦闘機は、敵の戦闘機と空戦を行うために軽快な運動性や優れた加速性能を追求し、ミサイルのほかに接近戦用の機関砲を装備するのが一般的である。空戦能力よりも対地攻撃に重点を置く戦闘爆撃機は、兵器搭載量が大きく、低空飛行性能や航続力に意を払った設計になっている。
しかし、これらの間に厳密な区分があるわけではなく、純粋な迎撃機のなかには対地攻撃能力をまったくもたないものが多かったが、そのほかの戦闘機は必要に応じて制空戦闘にも対地攻撃にも、また迎撃にも使えた。たとえば、アメリカ空軍が主力戦闘機として1970年代なかばから部隊配備しているF-15イーグルは、空戦能力を徹底的に追求した制空戦闘機として知られているが、対地攻撃能力も大きく、アメリカ本土の防空用にも使われている。また、空戦と対地攻撃の能力を両立させようという戦闘機も存在し、戦術戦闘機とよばれているが、これを広い意味で用いれば、一部の防空専用機を除いて、すべての戦闘機がこの範疇(はんちゅう)に入る。現在では戦闘爆撃機と攻撃機の侵攻能力が増したので、防空戦闘機といえども軽快な空戦能力が求められるようになり、昔のように爆撃機を主目標とする迎撃機は影が薄くなっている。また、戦闘機の価格が非常に高くなり、多種の戦闘機をそろえるのがむずかしくなったこともあるので、今では防空専用機はほとんど姿を消し、今後は広い意味で戦術戦闘機だけが使われることになろう。
[藤田勝啓]
戦闘機の歴史を振り返ると、まず気づくのがスピードの目覚ましい進歩である。戦闘機という機種は他の軍用機の多くと同様に第一次世界大戦中に誕生したが、この第一次世界大戦時の戦闘機は複葉機がほとんどで、装備エンジンは100~200馬力、最大速度は150~200キロメートル/時にすぎなかった。構造は木材あるいは鋼管を使った骨組に布を張ったものがほとんどである。これが第二次世界大戦の始まるころには、アルミ合金を主とする全金属製構造を用い、脚を引込み式にしたスマートな単葉機が主力となり、1000馬力前後のエンジンをつけて500~550キロメートル/時の高速を出すようになっていた。大戦末期には700キロメートル/時のプロペラ式戦闘機も登場したが、ドイツとイギリスが先陣をきったジェットエンジンの実用化により、速度は飛躍的に向上した。朝鮮戦争では最大速度が1000キロメートル/時に達するジェット戦闘機どうしが戦い、その後まもなく超音速戦闘機が実用になり、1960年代にはマッハ2級戦闘機が広く使われるようになったことをみれば、その進歩の速さがうなずけよう。
しかし、戦闘機の最大速度はその後さほど伸びず、現用機はだいたいマッハ1.8~2.5にとどまっている。それ以上の高速化が技術的に不可能なわけではなく、事実1960年代初めにアメリカではマッハ3を超えるロッキードYF-12が試作され、続いて旧ソ連でもマッハ3級のミグ25を完成させた。だが、マッハ3前後の速度になると空気摩擦による機体表面の温度上昇が著しく、従来のアルミ合金では耐えられないため、高価で加工に手間のかかるチタン合金や重量のかさむスチールを用いなければならない。そして機体は大型・高価になり、また戦闘機どうしの空戦においては、最大速度が大きいだけでは勝てないので、無理をしてまでマッハ3のような高速性能を求めないのである。自動車がカーブではスピードを落とさないと曲がりきれないように、マッハ2級の戦闘機といえども、空戦で機動する際はマッハ1.5~0.8程度の速度になり、もっと低い速度を使うことも珍しくない。そこで現在の戦闘機はこうした速度域における運動性や加速性に重点を置いた設計になっており、最大速度をマッハ2.5あたりまで高めうる余地がありながらも、簡易・軽量化のためマッハ2にとどめている戦闘機さえある。旧ソ連およびロシアだけがマッハ3級のミグ25を使ったのは、冷戦時代にアメリカの爆撃機やマッハ3級偵察機に対する迎撃を考えていたためで、他の戦闘機に比べると生産数はごく少ない。
[藤田勝啓]
現代の戦闘機が第二次世界大戦時のものと大きく異なるのは、飛行性能の面だけではなく、レーダーなどの電子装置を備え、ミサイルを主兵器としていることである。レーダーは第二次世界大戦後半から爆撃機の夜間迎撃用戦闘機に積まれ始めたが、現在はコンピュータにより情報処理を行い、単に遠方から敵を発見するだけではなく、兵器の発射に最適な位置とタイミングまで指示するようになっており、戦闘機の戦闘力を決定づける大きな要素として考えられている。そのほか、爆撃照準システム、航法システム、敵味方識別システム、敵の電子装備に対する妨害システム、電子妨害に対する防御システムなど、戦闘力に関係する電子装置は多く、その充実が図られているが、装備品が増えると高価になるうえ、故障をおこす率も増加するので、全天候能力などを犠牲にし、可動率の高い機体を多数そろえようという考え方も存在する。
空対空ミサイルは1950年代から実用化され、戦闘機の主武装となったが、接近した格闘戦に備えて機関砲も標準装備兵器として使われ続けている。一時期はミサイル万能と考えられたこともあったが、爆撃機のような鈍重な相手ならともかく、機敏に動く戦闘機に対してはまだ命中率が低く(ベトナム戦争時には10%程度)、機関砲の必要性がふたたび認識されたのである。しかし、戦闘機が携行するミサイルの射程と追尾能力が空戦の局面を決定することは間違いなく、能力と精度向上が続けられている。対地攻撃用には、やはりミサイルも用いられるが、破壊力の大きな通常爆弾とそれに誘導装置を加えた誘導爆弾、ロケット弾、広域散布爆弾、火炎爆弾、機関砲など多様な兵器が目標に応じて選択され、核爆弾の携行能力をもつ戦闘機もある。また、レーダーに探知されにくいステルス技術を応用した戦闘機なども実用化されている。
[藤田勝啓]
『『世界の偉大な戦闘機』全8巻(1983・河出書房新社)』▽『マイク・スピック著、藤田勝啓訳『イラストレイテッド・ガイド10 現代の航空戦(戦闘機編)』(1989・ホビージャパン)』▽『ワールド・エアパワー・ジャーナル著、エアクラフト研究会訳、松崎豊一監訳『最新戦闘機図鑑』(1998・ソフトバンク)』▽『三野正洋・深川孝行著『戦闘機対戦闘機』『現代兵器事典』(1998・朝日ソノラマ)』▽『阿施光南著『最強戦闘機伝説!――戦闘機の誕生から最後まで』(2000・山海堂)』▽『野原茂編『写真集 日本の戦闘機』『写真集 ドイツの戦闘機』(2000)、『写真集 アメリカの戦闘機』(2001・以上光人社)』▽『日本兵器研究会編『世界の戦闘機・攻撃機カタログ』(2002・アリアドネ企画)』▽『青木謙知著『戦闘機年鑑』各年版(イカロス出版)』
戦闘機F-15
戦闘機F-2
戦闘機の構造
ソッピーズ・キャメル
カーティスP-6 ホーク
三菱A5M(九六式艦上戦闘機)
スーパーマリン・スピットファイア
フォッケ・ウルフFw190
メッサーシュミットMe262
ノースアメリカンP-51 ムスタング
ノースアメリカンF-86 セイバー
ロッキードF-104 スターファイター
ミコヤン ミグ21
グラマンF-14 トムキャット
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…これは,科学技術の進歩と戦略・戦術的要求の変化,年々膨大化する関連諸費用等に影響されて,各機種のもつ有効性や有利性が時とともに変化していくからである。
[軍用機の特徴]
例えば戦闘機は,強力なミサイルや機関砲と,それを正確に管制する装置を備え,さらに,これら武器の威力を十分に発揮するために必要な優れた速度と運動性をもつことが要求されるように,軍用機が第1に要求される条件は,運用目的を達成するために不可欠な優秀な兵器,器材を搭載し,かつその効力を十分に発揮させうる管制能力をもつことである。このために飛行性能(水平速度,上昇速度,上昇限度,航続距離,離着陸距離,操縦性,安定性,運動性),機体強度,有効搭載量,残存性または抗堪性(被弾や故障しにくく,被害を受けても堪えうる能力),耐環境性(天候,気象など各種環境条件の悪いときでも正確に機能する能力),信頼性(故障発生率の低さ),整備性(整備の容易さ)の諸性能が厳しく要求される。…
※「戦闘機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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