日本大百科全書(ニッポニカ) 「竜文」の意味・わかりやすい解説
竜文
りゅうもん
蛇を基にして、これにさまざまの観念が結び付いた空想上の動物模様。
竜は海、川、池、雨と水に関係が深く、天に昇る霊獣と信じられた。中国では周・漢時代に、すでに種々の形式が生まれている。すなわち、鱗(うろこ)のあるものを蛟竜(こうりゅう)、翼をつけたものを応竜(おうりゅう)、角(つの)のあるのを虯竜(きゅうりゅう)、角がなく海の中にすむものを螭竜(ちりゅう)などとよび、鳳(ほう)、麟(りん)、亀(き)とともに四霊、あるいは四瑞(しずい)として尊ばれた。四神の一つである青竜は、東の方位を表象し、ことに漢時代の鏡の背面、墳墓の壁画、画像石などに表された。また、竜は天子の象徴とされ、ことに五爪(ごそう)の竜文は天子に限り許された模様であり、天子の衣装、王宮、家具、調度品などに施された。
わが国には、古墳時代後期に大陸より将来され、奈良時代以後、ことに仏教関係の模様として賞用された。奈良・薬師寺金堂須弥(しゅみ)壇の竜文は、代表的な初期の作例である。
なお竜文には、竜を円形に表した「団竜文(だんりゅうもん)」、2匹の竜を向かい合わせにした「双竜文」、竜の頭のみを表した「竜頭文」、竜に雲を添えた「雲竜文」、虎(とら)、鳳(おおとり)と組み合わせた「竜虎文」、「竜鳳文」など、さまざまな形式、組合せ模様がある。
[村元雄]